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悩み襲来(5)
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「ったく…残業どころじゃ無くなったじゃないか」
「はいはい、俺が悪うございました。残りこれだけだろ?俺がやってやるよ」
浅野は不貞腐れる俺を笑いながらパソコンを開いた。
さっきまでの情事が嘘みたいに涼しい顔しやがって…スーツなんて、全く着崩れて無いし。
それに比べて俺は、ほぼ素っ裸だし、腰は怠いわ、シャツはしわくちゃだわ、パンツなんて床に転がってるわ…
「本当、ネコって損だよな…」
「ん?何か言ったか」
「何でも無…へっくしゅん!」
「あーあー…早く服着ないと風邪引くぞ」
盛大にクシャミをした俺に、浅野はパソコンを見つめたまま、そう言った。
こうなったのは、お前のせいなのに…何だよ。
求められたら、俺だって欲しくなる。浅野はきっと、俺が断れない事なんてお見通しなんだ。
「まだ、動きたくない…」
何だか悔しくて、せめてもの抵抗で口を尖らせたままそう呟くと…
「何だ…着せて欲しいのか?」
浅野は突然椅子をクルリと俺の方へ向け、はだけたシャツの裾を掴むと、下から順番にボタンを止め始めた。
「い…いいよ自分でやるから…」
俺が、自分でボタンを止めようとすると、浅野がその手を掴んで制止した。
「いいから」
相変わらずの頑固っぷりでそう言うと、再びボタンを止め始めた。
人に服を着せられるのなんて子供の頃以来で何だか恥ずかしい。
浅野の顔を見下ろすと、そんな俺に反して、楽しそうな顔をしていた。
「楽しそうだな」
完全に遊ばれてる。
「楽しいよ。お前と付き合ってから、ずっと」
皮肉を込めて言ったのに浅野からそんな言葉が返って来て、意表を突かれてしまった。
「そういうの…ずるい」
俺は、そう言うと浅野の顔を両手で引き寄せて、口付けた。
「…会社でヤるの、クセにならないようにしないとな」
ゆっくり唇を離すと、浅野がそんな言葉を零した。
「……」
「あれ?突っ込んでくれないのか?」
「せっかく感動したのに、台無しだバカ??」
俺は、目の前の残念なイケメンの頬を両手で引っ張りながらそう言った。
「イででで」
「ぷ…あはははちょっとブサイクになった」
…俺だって楽しいよ。
こういう、ちょっとした時間も幸せだと思う。
俺が胸の奥で抱えている不安は、きっと、今が幸せだからこその不安なんだ。
浅野が元ノンケだからとか、女の子の事とか…
付き合わなければ感じる事の出来なかった感情だから。
だから俺は、そんな不安や悩みも、大事にしようと思う。
今、俺が、お前と恋愛してるっていう証拠だから。
朝。
-ピピピピ!ピピピピ!-
「ん…」
俺は、モゾモゾと布団から這い出し、けたたましく鳴る目覚ましを、手探りで止めた。
「う…」
何かおかしい…ものすごく体が怠い。
昨日は結局家に帰ったのは23時頃だった。そりゃあ、いつもより帰りは遅かったし、想定外のセックスで体力を使ったと言えば、使ったんだけど…
「あ゛あ゛あ゛…」
声を出せば喉が痛い。
起き上がると頭痛い。
全身が熱っぽくて、ボーッとする。
これは、紛れもなく…
「風邪引いたな…」
最悪だ。
でも、このくらい多分大丈夫だろう…
と、思って出社しようとしたんだけど…
「ゲホ!ゲホ!」
通勤ラッシュの電車に揺られて、いよいよヤバくなってしまった。
気分が悪くなり、途中で電車を降りてベンチに座り込むと、ネクタイを緩めながら大きく息をした。
「大丈夫ですか?体調が悪いようですが…」
俺の様子を見ていた駅員さんに、そう声を掛けられた。
「ケホッ…だ、大丈夫です。ちょっと風邪引いちゃったみたいで…やっぱり会社、休む事にします」
「大変だね…お大事に」
「ありがとうございます…」
駅員さんにまで声を掛けられてしまうぐらい、体調が悪そうに見えたのなら、もう休むしかないだろう。
上司に連絡すると『インフルエンザも流行ってるからねーちゃんと病院に行ったら土日でゆっくり休んで、月曜日出れなかったら、早めに連絡する様に』そう言われた。
風邪で休むのなんて何年振りだろう。
俺は、そのまま病院に行って、熱を測って驚いた。
37度8分。
そりゃあ、具合が悪いはずだ。
いろいろ考えすぎの知恵熱だったりして…ははは。
-ブブブ-
ふと、ポケットの中の携帯が鳴った。
「あ…」
しまった。携帯の電源切るの忘れてた…
画面を見ると浅野からのメールだった。
『風邪だって?大丈夫か?ちゃんと病院行けよ』
『久々風邪引いたー( ; ; )でも大丈夫。まさに今病院』
『そっか、後で休憩中に電話する。てかお前、風邪とか先に俺に言えよーo(`3´ )o』
そんな、珍しく顔文字付きのメールでのやり取りに思わず、顔が緩む。
そっか、こういう時は先に彼氏に頼るもんなのか。ちゃんと付き合った彼氏って、浅野が始めてだからな…何かくすぐったい。
「篠原さん。篠原淳也さーん」
「あ、はい」
看護士さんに名前を呼ばれ、俺は慌てて携帯の電源を切ってポケットに入れると、診察室へと向かった。
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