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悩み襲来(8)浅野Side
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‘あんまり信用されてないみたいだけど,
‘恋愛って難しいね,
…さっきのアレは、我ながら子供染みた事をしてしまったと思う。
篠原が俺に対して、まだ遠慮している事も、些細な隠し事をしていた事にも、胸がモヤモヤして…結果、あてつけにあんな事を言ってしまった。
まるで、ふてくされた子供か俺は。
「お店どの辺りにあるんですか?」
俺の少し後ろ隣を歩く千尋ちゃんにそう問いかけられた。
「あぁ、あの角曲がってすぐだよ」
こうやってプライベートで女の子と並んで歩くのは久し振りだな。
でも…何かが違う。
視線の高さや、つい大きくなってしまう歩幅を少し小さくして、隣を歩く千尋ちゃんに合わせる。
少し前の俺ならば当たり前にやっていた事にも、ちょっとした違和感を感じるのは、隣に篠原が居る事が、俺にとっての当たり前に、変わったからなんだと気付いた。
気付かせてくれた千尋ちゃんに感謝しないとな。
「どうかしました?」
意味もなく千尋ちゃんの顔を見てしまい、不思議そうな顔で見つめられてしまった。
「やっぱり目元とか似てるなーと思って」
咄嗟にそう言ったが、本当にそう思う。奥二重で、目尻がピンと跳ねた所とか、マスカラの乗った千尋ちゃんの睫毛は、篠原の男のわりに長い睫毛を思い浮かばせる。
「二人とも良く母似だって言われます。性格は兄の方が母に似てますけど」
「へーそうなんだ」
「優しいのは良いんですけど、自分の事より人の気持ちを先に考えて、我慢しちゃう所とか、考え過ぎて身動き取れなくなっちゃう所とか…」
「あ、それちょっと分かる」
なるほど、正にさっきの篠原がそう言う状況だったんだろうなと思った。
「ですよね。だから彼女もなかなか出来ないんだぞーって、言ってやって下さい」
「はははは…いるんじゃないかな?ただ、言わないだけで」
彼女じゃないけど、お兄さんの恋人は確実に今キミの目の前に居るよ。
「そうなんですかねー?でも部屋には全く女っ気無かったですよ。あ、洗面所に歯ブラシは二つありましたけど、多分彼女のじゃ無いと思います」
「どうして?」
「だって青と緑だったから。多分彼女のだったらどっちか一本はピンクか赤です」
そう真剣な顔で推理を披露する千尋ちゃんは探偵さながらだ。
「そう?青か緑が好きな女の子も居ると思うけど」
俺がそうツッコミを入れると、
「甘いですね浅野さん。浮気防止ですよ。赤かピンクなら一目で女の子のだと想像するでしょう?それが狙いなんです」
妙に説得力のある返事が返って来た。
言われてみれば確かに、今まで付き合った女の子の歯ブラシはみんな版を打った様に、ピンクだった気がする…
うわー女って怖い。
「浅野さんモテるだろうから気をつけて下さい」
もうそんな事必要無いと思うけど。
「うん…気を付けるよ…って、それ俺が浮気する前提みたいだよね」
俺が苦笑しながらそう言うと、千尋ちゃんも、苦笑した。
「あ、そうだ浅野さんの知り合いの可愛い女の子、お兄ちゃんに紹介して上げて下さい」
「はは、考えとくよ」
もちろん紹介するつもりはないが、兄を心配する可愛い妹を安心させる為にそう言った。
それからお目当ての卵と、その他もろもろを買った。
スーパーではパートのおばちゃんに「そこの美男美女のカップルさん、試食してって?」と、カップルに間違えられたのを、千尋ちゃんはやたら嬉しがっていた。
世間一般には、男と女が一緒に歩いているだけで、カップルだと勝手に決めつけられる。
何とも単純な世の中だ。
それぞれが自分の当たり前が、他人にとっても当たり前だと思っている。
その狭い視野から少しでも逸脱するだけで、それは異常だと判断されてしまう。
俺と篠原の関係が、世間一般で言う当たり前じゃなく、普通ではない事は紛れもない事実だし、受け入れなければいけない。
俺はいい。男を好きになったのはつい最近で、篠原が初めてだから。
だけど篠原は…
恋をする度に、今まで何度もこんな壁にぶつかって、悩んで来たんだろう。
だからこそ、篠原には俺の存在をもっと頼って欲しい。
もう悩まないで欲しい。
俺にとって篠原の存在が当たり前になった様に、篠原にとってもそうであって欲しいと思うのは、俺のワガママだろうか?
きっと、今の俺たちは、お互いを思い合う気持ちが、空回りしているだけなんだ。
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