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本当のこと
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ひと呼吸置いてから、口を開く。
「…俺は、生まれて直ぐに売られた……お金が欲しかったみたい」
鈴は何も言わずに、でも今度は真面目な表情で頷いた
「買われて、毎日セックスされたり、痛いことされたりして、それで家から勝手に出てきた…あの人のことは忘れようと思ってるし、どうでもいい…そう思いたい」
「苦しいね」
「うるさ…そういうの要らない」
「結は溜め込んで溜め込んで、限界きちゃうタイプの子だよね」
「俺は、自分で選んだ。体売るのも、それで稼ごうって決めたのも俺」
「…それしか、分からなかったんでしょ」
鈴の静かな声が妙に大きく聞こえて、その言葉に心臓がどくん。と大きく跳ねる
「辛かったら辛いって言っていいの。嫌なことはしなくてもいいんだよ。」
それから、鈴はもう一度小さく口を開いた。
「何となくだけど、結にとってそういう行為はトラウマになっちゃってるみたいで、正直俺が苦しくなった…知らない人にされたり、痛いようにされたらどんな気持ちになるかなって考えたらさ、胸が痛くて、考えるだけでも怖いのに結はそれを経験したんだなって思ったらね、本当に辛いの」
「…何で鈴が苦しくなるの」
「本当だよね。辛いのは結なのにね」
言葉にならなかった。
けど、自分で選んだことだからと弱音一つ吐けずにいたのに、鈴が『考えるだけでも辛い』そう言ってくれたから、それだけでも俺の気持ちを代弁して話してくれたような感覚に少しだけ気持ちが軽くなった
「……それを踏まえて、言いたいことがある」
胸がビリッ。と痛んだ
覚悟していたはずなのに言われたくないと、逃げ出したい気持ちになる
「──────結が、好きだよ。」
「…え?」
突然のことに、間抜けな声が出る
「守りたいって思った。そばにいて欲しいって思った。
好きになったのは、もう…一目惚れだったけど、結と関わって、知っていくうちに益々その気持ちは大きくなっていった。
結が男だとか、俺が男だとか、そんなのは全然関係なくてさ。ただ、結っていう存在の、君を好きになった」
……一目惚れって。
鈴は、俺のことが好きだったの?
でも、怖い。
今までみたいに、告白されて直ぐに『いいよ』と返事ができなかった
それだけ、戸惑っていた。
付き合えば必ず、別れる
それはもう俺の中ではほぼ確信に近かった
鈴だから、とかそういう事ではない
誰が相手でも、それは変わらない
いつかは別れる。
だから、鈴とは付き合いたくないと思った。…別れたくないから。鈴と会えなくなるのは、嫌だと思ったから。
「返事はいつでもいいよ。でも、俺の気持ちは忘れないでね」
そう言うと、いつもの調子に戻った鈴がぎゅーっと抱きついてきた
「可愛い」
「…可愛くない」
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