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助手席でプリンを膝の上にのせて、さっきから小さな深呼吸の音ばかりが聞こえてくる
そんなに緊張しなくても怖くないのに。
母さんは明るくて優しいし、父さんも紳士的な人。
弟はガリ勉で、妹は元気。
みんないい人たちばかりだ。
まぁ、強いて言うなら妹が騒がしいから気圧されないかは心配だけれど。
「結」
「…っ、なに」
「そんな緊張しなくても大丈夫だよー。
ね、しりとりしよっか」
気を逸してもらおうとしりとりを始めた。
「しりとり」
「理科」
「怪獣!」
「う?」
「うん!う!」
「…うさぎ」
「ギター」
「……………た?」
もう既に眉をひそめて、ぱっと顔を上げたと思ったら「やっぱりしりとりやめる」と言われて思わず笑ってしまう
「じゃあ、怖い話とかする?」
「怖い話?」
「そう!お化けとかの」
「……何でそんなこと言うの」
発された声は細くて『あ、そうだ。結お化け系ダメだったんだ』と思い出す
「ごめん、話さないから!泣かないで!」
「っ、泣いてないし」
丁度赤信号だったので頭を撫でたら「だから泣いてないって」と手を払われた
「じゃあなんの話するー?」
「……鈴の、小さいときの…話聞きたい」
「結は可愛いね。
でもその話は、恥ずかしいから秘密!
母さんに聞いてみて!」
そこまで恥ずかしいと言う訳ではないけれど、家についたら俺は少し父さんと話がしたい。
その時間は母さんか弟に結を任せようと思っているから、その時に沈黙が流れ続けると結も辛いところがあるだろうし、話題と言ってはあれだけど話せる内容をとっておきたかった
「次の信号を左に曲がってずーっと真っ直ぐ行くとつくよ!」
「もうつくの?」
「あと10分くらい!」
「……自己紹介の練習、もう一回していい?
昨日…考えたの」
焦ったように言葉を繋ぐ結。
「いいよ!聞きたい!」
「……結です。
鈴と一緒に暮らしていて、いつも楽しいです。
今日は、…よろしくお願いします」
「授業参観と料理のお話はしないの?」
「した方がいい?」
「うん!した方がいい!」
した方がいいかどうかは分からないけれど、可愛かったから俺がもう一回、聞きたい
結が自己紹介の練習を必死にしているうちに、家から一番近かった公園を通り過ぎる。
「もうつくよー」
そう言えば、ピンッ。と背筋を伸ばして固まって動かなくなってしまった
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