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少しだけ意識した。(そらる×キヨ)
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みんな帰った。帰っていい?って聞いてきたから、駄目って答えたのに、帰ってった。意味がわからない。
「はぁーーー・・・。」
でっかく溜息をついても、隣で机に突っ伏して寝てるそらるさんは全く気づかない。完全に爆睡。そして、泥酔。
この人は酔っ払うと寝るタイプみたいだ。
机の上には酒を飲み終えた空のコップが散らかっていた。ビールの瓶だったり、日本酒の瓶だったり、色んな種類の酒を飲み干した跡がある。
「・・・・・・はぁ・・・。」
今度は小さく溜息をついた。
俺はクリームソーダを手に取り、そして一気に飲み干した。
「あの、お客様ー。そろそろ閉店の時間ですので、そちらのお客様を・・・、」
居酒屋のお店の人が困ったように微笑みながら俺に声を掛けてきた。
困ってるのは俺だ。その顔をしたいのは俺だ。
なんて言葉を飲み込んで、俺も適当に微笑み返した。
「すいません、わかりました!今起こして帰ります。」
俺がそう言うと、店員さんはご協力ありがとうございます、と、優しく微笑み、自分の持ち場へと戻って行った。
俺はそらるさんに視線を戻した。
「・・・・・・そらるさん?」
肩をポンポンと、二回叩いた。しかし、起きない。
「おーい、そらるさーん。」
今度は軽く揺らしてみた。しかし、起きない。
「そーらーるーさーんー!」
次は両肩を掴んで強めに揺らした。・・・お?
「・・・・・・・・・ん・・・。」
高いような低いような、やはり酔っ払ってそうな、そんな声で返事が返ってきた。
「起きました?もう閉店の時間ですって。帰りましょーよ。」
「・・・・・・なぁい・・・」
「はい?なんだって?」
「・・・うごけなぁい・・・・・・」
「はあ???」
やばい。これはやばい。俺一人でどうにかなるのか?30目前の男を30目前の男が背負って帰るのか?でもまぁ一応体力には自信あるし、無理ってわけではないけど・・・。
「・・・そらるさん?」
「・・・んー・・・?」
「おぶりましょうか?」
冗談半分でそう声をかけた。いや、冗談半分ではないか。完全冗談。全部冗談。流石のそらるさんでもこんな冗談真に受けるはずがない。
「おぶってえ〜」
真に受けた。
まじか。この人まじか。本気で酔ってんのか。酔ったら爆睡するだけじゃなくて、性格も変わるのかこの人。やばい。言っちゃ悪いかもしんないけど言う。言わせてもらう。この人、めんどくせえ。
・・・でも、仕方がない。
今日はあまり持ち合わせもないからタクシーは呼べない。かと言って電車で帰るかと言われても、俺の家までそこまでの距離じゃない。ていうか、こんな泥酔してる人を公共の場へ連れていけるはずがない。
・・・ん?待て、ちょっと待て、おかしいぞ、この流れ。今俺、そらるさんを自分の家に連れてこうとしてた?
「いやいや、無理無理無理無理!!」
俺は首をブンブン横に振った。俺も酔ってんのか?いや、馬鹿か。酒は一口も飲んでない。
「そらるさん、家どこですか?送ります。つっても、今日金下ろしてくるの忘れたんで歩きになっちゃいますけど。」
「・・・ん〜〜とぉ〜、まふまふと同じマンションだよ〜〜」
そらるさんはそう言って、ビシッと人差し指をとある方向へ指した。俺も何度かまふおの家に行ったことがあるから場所は分かる。そらるさん、マンションはそっちの方向じゃないです。
「わかりました、じゃ送るんで、立ってください。」
「あ〜〜〜いっと。おっ?おっとっとっと〜〜」
「うわ、あぶねっ!!!」
そらるさんが覚束無い足取りで立ち上がった途端、見事に足がもつれて倒れかけた。俺のいる方向に倒れてきたから何とか抑えられたけど、逆方向だったら綺麗に倒れてたかも。危ねぇな本当に。
取り敢えず俺はそらるさんの腕を掴んで支え、靴を履かせた。俺が、履かせてあげた。
そらるさんを支えたままみんなが置いていったお金と合わせて会計を済ませ、店を出た。
まふおの住むマンション、つまり、そらるさんの住むマンションはこの居酒屋から大体歩いて10〜15分くらいかな。そこまで遠くない。
「そらるさん、支えなくて歩けます?」
「あれぇ?キヨさんおぶってくれるんじゃなかったんだっけぇ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「ねーねーキヨさぁん、おぶってよぉ〜。オレ歩けないよぉ〜。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
俺が無言でそらるさんを見ていると、そらるさんは可笑しそうにケラケラと笑いながら俺の頬っぺを摘んだり引っ張ったりしていた。性格、変わりすぎじゃね?ほんと。
「ねぇキヨさーん、おぶってくれないとオレここから動かないかねーだ。ふーんだ。」
そらるさんはそう言って、道路のど真ん中で膝を抱えて座り込んでしまった。
呆れた、なんて言葉じゃ足りないくらい呆れている。性格が変わってるっていうか、幼くなってんのか?これは。
「はぁ・・・・・・。わかった、わかりましたから、早く立ってください!!」
「あはは、わぁ〜〜いおぶれおぶれ〜。」
俺がそらるさんの前に立って背を向け、そして背中に乗りやすい様に膝を曲げて屈んだ。
「よ〜いしょっと、」
ズシッと、そらるさんが俺の背中に乗りかかったのがわかった。しっかりと足を抑え、ゆっくりと立ち上がった。
案外、重くない。そういえば、さっきまだそらるさんが酔ってない時にジムに通ってるとか言ってたな。それで何キロか落としたんだとか。
「歩きますよ、気持ち悪くなったら言ってくださいね、そらるさん。」
「あ〜いよ〜〜」
間の抜けた声が暗い夜道に響いた。
そらるさんの少しだけ熱い吐息が耳にかかる。ちょっと擽ったいけど、大丈夫。
そらるさんの髪の毛が頬に当たる。いい匂いで、やっぱり擽ったい。
・・・・・・あれ?なんか俺キモくない?何?いい匂いって。いや、そりゃいい匂いだからそう言ったけど、思ったけど・・・。
なんか、おかしい。顔が熱い。
「ふぅ〜〜〜・・・・・・。」
「ぅっ・・・!?」
「んぇ〜?どうしたのキヨぽん?」
キヨぽん?
「・・・い、いや、何でもないです!!」
びっくりした、焦った。
今、そらるさん、ふーってした。いや多分、絶対、わざとじゃないってことはわかってるんだけど、今のはすげえ、やばかった。一瞬腰抜けるかと思った。
俺はそんな変な感覚を一刻も早く捨てようと耳を乱暴に掻き、急いでそらるさんを家まで送り届けようと歩を速めた。
まじで早く帰りたい。
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