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ーーふ、と逢坂が小さく息を吐き出した。
「……君は、優しいね」
そんな風に耳元で柔らかく囁かれると、吐息がかかってくすぐったい。
密かに悶えながらも、ゆっくりと顔を上げれば、そっと髪を撫でられて。
「……心が、綺麗で……俺とは違って、きらきらしてて、眩しい」
「…逢坂…?」
ーーその表情が、妙に切なく見えたのは、自分の気のせいだろうか。
「……あのね」
逢坂はその顔に微かな笑みを浮かべると、目を細めた。
「多分、君に生気をくれたのは……彼女だと思う」
「え…?」
「君に助けられて、ようやく成仏出来るってなって……もう生気がいらなくなったんだろうね。だから今までに生者から集めたそれを、お礼にって君にくれたんだと思う」
「彼女が、俺に…」
ーーそうか。
知らないうちに、自分もまた彼女に、助けられていたんだ。
逢坂は頷いて、微笑んだまま、続けた。
「君の言う通り、全部が悪だって、最初から決めつけるのは良くないね。だって君は現に……霊に助けられたんだから。…俺は彼女達のことなんて、全然見えてなかった。自分達だけ、助かればいいって…」
逢坂の綺麗な顔が、僅かに歪む。
…かと思うと、その手がするりと後頭部、そして腰に回されて。
「わ……っ」
そのままぎゅっと抱き寄せられて、どきんと胸が跳ねる。
「……怒鳴ったりして、ごめん。それと、気付かせてくれて……ありがとう」
「……っううん」
耳元で柔らかく囁かれた声に、じわりと、瞳に涙が滲む。
それが溢れないように、必死にきゅうっと唇を噛んで、耐える。
ーー良かった。
逢坂に、自分の思いが届いたのだ。
抑えきれない嬉しさから、そっとその背中に手を回し、抱き締め返す。
この状態を、誰かに見られたらどうしようとか、そんなのはどうでも良かった。
ただ今は、この喜びを、噛み締めていたい。
その思いだけが、心を支配していた。
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