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◇◇
「…林野君…」
走り去る彼の背中を見ながら、はあっと溜息をつく。
一体、何がいけなかったのだろう。
自分はただ、…彼が心配だっただけなのに。
誤解を解きたいけれど、今追いかければ、かえって怒らせてしまうような気がする。
そう思い、大人しく教室に戻ることにした。
「ねえ、逢坂くん」
「あ、……吉田さん」
戻る途中、誰かに声をかけられ、振り向けば……同じクラスの女の子が一人。
彼女は笑みを浮かべて、俺の腕に手を絡め、身体を密着させてくる。
「…えっと、…何か用?」
女子は、あまり得意ではない。
香水の匂いは強いし、それに何を考えているのか分からないし。
「…意外だよね。逢坂くんが、そっちだったなんて」
「え…?」
そっち、とは。
困惑する俺に、彼女は唇の端を吊り上げ、くすくすと愉しそうに笑って、囁くように言った。
「…私、見ちゃったの。土曜日の日」
土曜日。
…もしかして。首筋を、嫌な汗が伝う。
「ーー逢坂くんが林野とキスしてるところ」
「っ……!」
まさか、見られていたなんて。
尚も笑い続ける彼女に、きゅっと唇を噛み締める。
「…何が君の望みなの」
その事実をみんなにバラさず、自分だけに打ち明けてくるということは。
彼女には何か、通したい望みがあるのだろう。
「…ふふ、話が早いね」
…自分なら、どうなってもいい。
けれど、自分の勝手な行動で、彼に迷惑をかけることになるのは、許せない。
「…好きだったの。逢坂くんが転校して来た時から、ずっと」
彼女は猫が甘えるような声を出しながら、更に身体を密着させてくる。
普段ならさりげなく離すところだけど、弱みを握られてしまった以上、無下には出来なかった。
「……付き合ってよ、私と。…その条件を呑んでくれるなら、誰にも言わないであげる」
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