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episode1-1
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人生はいつだって選択の連続だ。
ゲームと同じで、必ず分岐点がありコマンドをミスればゲームオーバーにもなる。人生のゲームオーバーなんて、洒落にならない。画面の向こうだったらゲームオーバーになればリトライは可能だろうが、ここは現実だ。リトライなんて不可能である。
自分自身のコマンド選択によって、迎えるエンドもそれぞれ違う。ハッピーエンド、ノーマルエンド、バットエンド。どのエンドもシミュレーションゲームなどでよくある終わり方だ。攻略するならハッピーエンド一択なのだが、何度も言うがここは現実だ。だから自分が迎えるとするならば、せいぜいノーマルエンドだろう。良くもなく悪くもなく、無難な人生の終わり方。
「全エンド回収…っと。なんだ、もう終わりかよ」
ブラウザに表示された「TRUEEND」という文字に、新垣真はヘッドホンを耳から外し1人ボヤいた。ぐっと伸びをすれば長時間同じ姿勢を保ち続けていた背筋が悲鳴を上げているような気がした。
真がプレイしていたのは、ブラウザで遊べるフリーホラーゲーム。最近配信され人気を集めているものであった。このゲームではENDが3種あり、その内2つが「ハッピーエンド」と「バットエンド」。そして最後の1つは2つのENDを回収して解放される「トゥルーエンド」。直訳すると「真実の終わり」。その物語の本当の結末だ。
「まぁまぁ面白かったんじゃねーの」
マウスを動かし手作り感満載のスタート画面に戻って呟く。難易度は真的にはそれほど難しくはなかったが、そこそこ楽しめた内容だと思う。素人が作ったゲームだからと言って、最近のフリーゲームのクオリティは侮れない。
ブラウザを閉じると部屋は闇に包まれる。いつの間にか日はすっかりと落ちていたようだった。壁伝いに歩いて部屋の電気を付けると、蛍光灯の眩しさに思わず目を細める。壁に掛けてある時計を見上げれば、時刻は午後7時を回ろうとしていた。
(そろそろかな)
時間を確認すると真は部屋を出て1階へと下りていく。リビングに顔を見せれば、ちょうどキッチンに立っている母と目が合った。
「ちょうど良かった、真。ご飯出来たから手伝って」
「うん」
今日の母のステータスは、どうやら良好のようだ。と、母の声色や表情から推測する。4脚のイスが並べられるテーブルに、母に言われるがまま3人分の夕食を真は運び始めた。
※
夕食を終え風呂を済ませ、自室に戻った真はベットに寝転んだ。充電器に繋げてあったスマホの電源を入れてSNSアプリを起動する。クラスのトークグループが動いており、開いて会話を遡ると明日は何やら席替えがあるようで、たまたま部活帰りに担任からそんな話を聞いたクラスメイトを中心に騒いでいるようだった。
(席替えか)
特に会話に参加せずアプリを閉じ、天井を見上げる。今の自分の隣の席は誰だったか。と思い出そうとするが、顔がぼんやりと霧がかかったようで早々に思い出すことを放棄した。誰が隣になろうがそもそも自分には関係のないことである。
誰が隣になろうとも、それなりに会話をしてそれなりに接しておけば、後々困ることは何も無いだろう。
「あ、やば限定クエ」
そんな事よりも真にとって重要なのは、今ハマっているソシャゲの限定クエストだった。席替えの事など頭の隅に追いやり、アプリを開いてゲームに没頭する。
人生はいつだって選択の連続で、コマンドミスさえ無ければそれなりに上手く行って「ノーマルエンド」へと向かう事だろう。良くもなく悪くもない、無難な人生で充分だ。
だが、真にとってその席替えが「ノーマルエンド」から「トゥルーエンド」へと変わる大きな分岐点となる事をまだ彼は知らない。
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