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episode1-3
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学校に居ると、いつもよりも時間が遅く流れ、ゲームをしていると時間が早く流れるように感じるのは何故だろうか。
漸く6限目が終わり、帰りのSHRも終えた放課後。今週掃除当番であった真は無言で科学実験室の床を箒で掃いていた。
(ソシャゲの体力回復してるだろうから帰りの電車で全消費して…帰ったら一狩り行くか…)
この後の予定を組み立てながら、ゴミを塵取りで集めて捨てる。拭き掃除は同じ当番のクラスメイトが既に終わらせているため、掃除は10分程で終了した。
「あ、新垣。少しいいか」
「はい」
「悪い、このプリント今教室にいる鳥羽に渡してきてくんねーか?今から先生会議でさ、手が離せないんだ」
「あぁ…はい。いいですよ」
「頼むな。提出は明日でいいって伝えといてくれ」
教室の鍵を職員室へと返却しに行く途中、担任の先生に呼び止められた。届け先が鳥羽だと知り、朝の険しい表情が頭を過り断ろうかと迷うが、真は引き受ける選択をする。先生はプリントを真に渡すと、会議で使う資料がパンパンに詰められたファイルを抱えて早足でその場を去っていく。
(…この選択で良かったのか)
引き受けてから真は自分の取った選択が本当に正しかったのかと自身に問うた。この学校内での周りが自分に大して持っているイメージは大体分かっている。そのイメージを崩さない為にも、自分の選択は間違いではないハズだ。
足早に教室へと向かい、扉を開く。中を覗くと、自分の隣の席に鳥羽優が机に突っ伏していた。どうやら、ペナルティである課題をこなしている内に眠ってしまったらしい。
(…起こすべきか)
ここでまた真に2つの選択肢が出てくる。起こすべきか起こさないべきか。ここで起こしてプリントを渡したとして、今朝のあの出来事があるのだ。この選択肢は選ぶべきではないだろう。
ならば、選ぶのは起こさないという選択肢だ。提出期限の事はメモにでも書いて一緒に置いておけばいい。真は早速自分のリュックからペンとメモを取り出すと、担任教師からと提出期限の事を簡単にメモをし、プリントと一緒に空いている机のスペースにそっと置いた。これでミッションはクリアである。
(早く帰ろう)
早くしなければソシャゲの体力が漏れてしまう。イベント期間中の体力漏れは致命的である。早くクエストを周回して回復した体力を消費しなければ。足音をたてずに優の傍から離れ教室を出ていこうとする。が、運悪くリュックが誰かのイスに当たってしまい派手な物音をたててしまった。
やばい。と思ったと同時にその物音で優は目を覚ましてしまう。ゆっくりと顔を上げ暫し寝ぼけた様子で周囲を見渡し、そして真の姿を捉えると驚いたように目を見開く。
「…ごめん、起こしちゃったな」
真は咄嗟に苦笑気味にそう声をかけた。優からの返事はない。一瞬の沈黙が下りた後真は再び口を開いた。
「あー先生から課題のプリント預かっててさ、そこ置いてる。起こしちゃ悪いと思ってメモも残してんだけど、期限は明日まででいいらしいから」
「…サンキュ」
「え…あ、おう」
どうせまた沈黙が下りるだろうと予測していたが、低い寝起きの声で礼を言われ今度は真が驚いた。戸惑いながらも早くこの場から去りたくて、「じゃあ…」とそそくさと教室の扉へと向かう。
「なぁ、お前」
「…何?」
扉へと手をかけた時、優が真を呼び止めた。まだ何かあるのだろうかと振り返れば、優は鋭い目つきで真の事を見つめていた。
「中学、俺と一緒だったの覚えてるか?」
「え?」
突然放たれた言葉に真は気の抜けた声を発した。何かと思えば、卒業した中学が一緒だった?急いで脳内の記憶から思い出そうとするが、そもそも他人に興味のない自分が中学時代の人なんて簡単に思い出せるはずもない。嘘をつくか、正直に覚えていないと答えるか、二択の選択肢を迫られた真は後者を取ることにした。
「…ごめん、あんまり覚えていない」
「…だろうな。だって同じクラスになった事ねーし」
優はガシガシと後頭部を掻くと、大きな欠伸をひとつして帰る準備を始め出す。
答えは分かっているのに、何故そんな事を聞くのだろうか。それが真には不思議でたまらなかった。
「俺はお前の事を知っているんだけどよ」
そう言いながら優は席を立ち、荷物を持つ。鋭い視線が真を射抜く。
「お前、中学の時から全然変わってねぇな」
優の言葉の意味が分からなくて、どういうことだと問いただしたいが言葉が喉に引っかかり上手く出てこない。そんな真の事など気にする様子もなく、優はそのまま吐き捨てるように告げた。
「俺はお前が嫌いだ」
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