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「ペンダントの持ち主が北西にね…。ユーリにしちゃ適当過ぎるな」
「え?」
「翠碧の男はユーリしか居ない。あいつは占いというより見通す力があるんだが、お前が会ったのが本当にユーリならその力を使うまでもなくこのペンダントの持ち主に気付いたはずだ。深紅のブラッドだろ?」
「──!!どうして…!?」
「俺達が身に付けてる種族の装飾品はどれも血筋によって特徴があるんだ。この深紅のペンダントには純血の印である冠のモチーフが隠れてる。そして今や深紅の純血はブラッドだけだから、つまりコレはあいつの物ってわけだ」
男はペンダントの模様を指でなぞり、隠れてる冠のモチーフを教えてくれた。
言われてみれば確かにその模様が見て取れる。
"単に気付かなかっただけじゃないのか?"と彼の行動を思い起こせば、違和感のある様子を思い出した。
このペンダントを手に取って見ていた時だ。
「ユーリ、多分気付いてたと思う。このペンダントを見せた時、一瞬だけど様子がおかしかったから…」
「!だったら意図的に隠したんだろうよ。理由は分からないのか?」
「うん……。何でか俺に興味があったみたいだけどそれ以外は…」
「興味?そりゃあるだろ。俺もあるからな」
「……はい?」
「言っとくがな、俺は元々男は餌としか思ってねーし趣味じゃない。でも何だろうな……お前を見てると無性に触れたくなる」
「──っ!」
細められた黄金の瞳の奥がうっすらと色濃く輝きを秘め、そんな目に覗き込まれた俺は慌てて目を瞑った。
こいつの瞳の色が変化した時は絶対に見ちゃいけない。
俺が短時間で得た教訓を披露すると男は可笑しそうに笑い、指を俺の顎に掛けて顔を上げさせた。
「やっぱり駄目か?」
「当たり前だろ!こういう事は好きな奴としかしない…!」
「好きな奴…ね。恋人でもいるのか?」
「っ……」
恋人とは到底呼べない。ただ俺が勝手に好きなままで…ブラッドにとっては迷惑も良いところだ。
未練がましいのは分かってる。
「いない……、だけど無闇にそういう事はしたくないんだ」
俺が小さな声でそう呟くと胸がチクチク痛む。
もし俺が同性とそういう事をするならブラッド以外は考えない。
こんなにも好きで苦しくて……俺はあいつに会った時、ちゃんと笑って別れを告げられるだろうか?
「……分かったよ。でもお前を諦めるつもりはない」
「──っん!んんっ…!っは、やめ…ろ…って!」
強引な口付けを突き放し目を開けるとこいつは余裕の笑みでチロッと舌を出した。
まるでガキが悪戯に成功した時のような顔だ。
「今日はこれくらいで我慢しといてやるよ。もうすぐ夜が明ける。その前にこの街を抜け出すぞ」
「え?あ、ちょっと待てってあんた!」
俺は外に繋がるドアへ歩き出した男を目で追いながら急いで荷物をまとめた。
そして建物を出る前に振り返り、もう一度室内を見渡した。
あの不思議な生き物。魔女達の複雑な関係性。ユーリが企てようとした事は一体……。
「早くしないと夜が明けちまうぞ」
「!今行くよ」
大きな何かに引き込まれるような感覚を足に覚えながら、俺と男はその静かな街を後にした。
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