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レオと別れた場所からしばらく行くと建ち並んでいた民家が途切れて道を挟んでいた。
その交差点の向こう側に趣のある洋館がぽつりと一軒だけ建っている。
如何にも魔女が住んでいそうな雰囲気だ。
「赤い紋章…………これかな」
レオに教えられた通りドアの付近を念入りに探り見るとランプの影に紋章らしき物を見つけた。
ここで間違い無さそうだ。
「…………」
見るからに重々しいドアは違った意味で俺に重圧感を与える。
このドアの向こうにはブラッドがリズって人一緒にいて……。
「…………出直そう。こんな朝早くに押しかけても迷惑だし…」
ひとまず落ち着こう。
混乱した今の状態で彼を目の前にしたら何を言い出すか自分でも分からない。
自分に言い訳をして立ち去るべくドアに背を向けた時、背後でガチャッとドアの開く音がした。
「あら…、うちに何かご用?」
「っ──!!」
涼やかな女の声が聞こえ反射的に体が振り返る。
すると、鮮やかな深紅の瞳を持つ女がドア縁に凭れ目を細めてこちらを見ていた。
ゾクッとする程綺麗な人で雰囲気からして多分俺より大人。
彼女にじっと見つめられ、自分からの答えを待っている事に気付いた俺は慌てて言葉を探す。
(何か言わなきゃ…!)
そう焦れば焦るほど都合の良い言葉は見つからず、結局黙り込んだまま顔を俯かせた。
すると素っ気ない声が続く。
「……用がないなら帰って頂ける?」
「あ…あの…!ブラッドは……ここにいますか…?」
「ブラッド…?彼ならベッドにいるけど…何の用?」
「っ…!」
彼の名を出した事で益々怪訝そうにそう問われたが、彼女の言葉で胸がきつく締められた俺はそれ以上声が出ない。
彼に会いたくて…声が聞きたくて…だけど────何もかもが限界だった。
「…………」
「…!どうしてあなたがコレを?あっ、待ちなさい!」
俺は無言でペンダント外し、それを彼女に渡すと踵を返して走り出した。
どこに向かってるのかなんて分からない。
とにかく一刻も早くこの場を離れたくて無我夢中に足を動かす。
その足がもつれて転びかけた所で俺はようやく立ち止まり後ろを振り返った。
どこをどう走ったのか覚えてないが街の外れまで来ていたらしく、近くに次の街への標識が建っている。
……これで良かったんだ。
彼女には何も告げていないから俺の存在が邪魔なら何とでも言える。
「……っ……ぅっ……く…っ」
立ち止まった途端、涙が溢れてきた俺は人目に付かないよう細い路地に入り蹲った。
会う勇気なんてない。声を聞く事すら恐い。
本来の目的だったペンダントの意味すら確かめられず、それを返してしまった。
でもこれで俺の旅は終わりを告げる。
────彼が幸せでありますように。
そう願いながら蹲り、俺は泣き声を押し殺した。
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