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…………鼻が詰まって息苦しい。
「アホか俺は…」
予想してた事で傷付いて更にその傷を抉られて……全部分かってた。
分かっててここへ来たんだ。
それなのに……。
「涙…いつ止まるんだろ…っ」
どれだけ泣いても次から次へと涙がぼろぼろ零れる。
だけどこの涙の分だけブラッドの事が好きだったんだろうと考えたら、いい歳して泣き癪るみっともない自分でも悪くない気がした。
ペンダントは在るべき場所に戻ったんだ、これからどうしよう……って何考えてんだ、村へ帰るだけだろ?
「……」
ちゃんと戻るつもりで俺は村を出た。
なのに今は戻りたくない。
かと言ってここに残りたいって訳でもなく……、つまり俺はどうしたいんだ?
「旅……続けてみようかな」
ブラッドがあのペンダントを残さなければ俺は今でも村にいたと思う。
だったら彼は俺にきっかけを与えてくれたんだ。
そう考えると少しだけ気力が湧いて涙が終わりをみせた。
村での生活は悪くない。だけどそれ以上に俺は色んな街を、この世界を見て回りたい。
…でも本当は、単にブラッドと過ごした場所に居たくないだけかもな。
明確な理由ははっきりしないけど、とにかく行動すると決めて袖で涙を拭った時、急に人の気配がした。
「スーバル。あーぁ、やっぱりまた泣いてる」
「ユーリ…!?」
突然タイミングを図ったかのように細い路地の先から声がして顔を上げた。
するといつの間にかユーリが俺から少し離れた所に立っている。
彼はまるで影から浮き出たように音もなく現れ、今は小さな足音を響かせて俺に近付く。
「ブラッドには会えた?」
「っ!あんた…やっぱり知ってて黙ってたのか!?」
「黙ってたって何を?」
「あのペンダントの持ち主がブラッドだって事だよ!」
「ああ、それ?別に聞かれてないから答えなかっただけだし。それより会ったの?ペンダントは?」
「返した。けど……ブラッドには会ってない」
"ベッドにいる"だなんて言われたら会える訳がない。
何となく俺の雰囲気を察したのかユーリはそれ以上詳しく聞こうとはしなかった。
その代わりと言わんばかりに手が差し伸べられ、俺は彼を見上げる。
「迎えに来たんだよ。俺と行こう?」
「……どこへ」
「とりあえず俺が住んでる街。そこから先は後で考えればいいから。…君は元の暮らしには戻れないよ」
「っ!?」
「俺言ったよね、興味があるって。君の運命は動き出した、何も知らなかった頃にはもう戻れない。自分でもそう感じてるんじゃない?」
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