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「え───」
「初めてあの村に禍が起きた時、俺の母親は集落から禍の進行を食い止めてたんだ。術の最中、俺達は全員"沈黙の祈り"を強いられてて村の連中が助けを求めに来た時、俺達は術の最中だって事を告げられなかった。すると村の連中は散々暴言を吐いて帰ってったよ」
淡々と話している彼はどこか遠く、多分昔の光景を思い出している。
その時俺はまだ生まれたばかりで何も記憶には残っていない。
ただ、物心が付いた頃には既に村と魔女の間に亀裂が生じていた。
"奴らはこの村を見捨てた"。そう言われ続けた理由がこれなのか?
「なんで誤解を解こうとしなかったんだ?」
「したさ。何日か後に村へ行った。次の禍の報告もあったからな。けどあいつらは耳も貸さずに俺達を追い返したんだ。リリー婆さんだっけ?あいつの印象が一番強く残ってる。自分の命を費やしてまで術を続けた母親の事を言われたからな。こんな奴ら…救う価値なんて無いって思ったよ」
「…そっか…」
「怒らないのか?俺はお前を騙して村へ行ったんだぜ?」
「結果的には救ってくれただろ。それに……よく分からない。」
「分からない?」
「リリー婆ちゃんはさ、最初の禍で子供を全員亡くしたんだよ。それも自分の目の前で。10才、7才、5才…だったかな。だから少しだけ…分かる気がする」
「!それで俺を睨み付けてたのか…。その時俺は5才だったから下のガキと同じ歳だ。なる程な」
互いに違う苦しみを味わい、それが俺達と魔女の関係を絶たせた。
ちゃんと話し合えば誤解も解けて交流も続いていたのかもしれない。
それぞれの想いが複雑に交差してすれ違いを作る結果は、何となくさっきまでの俺達に似ている。
もしブラッドがここに来てくれなければ、二度と会う事もなかったはず。
「でも、何で村を助けてくれたんだ?嫌ってたんだろ?」
「お前がそれを願ったから」
「俺……?」
「あぁ。お前の願いなら…叶えてやってもいいと思った。それにお前の親父さん達は人柄が良いし、村のガキ共も真っ直ぐな良い目をしてた。でも自分の母親が命懸けでも半分しか祓えなかった物だ、俺に出来るのかって…なかなか決心が付かなかった。そのせいでお前を酷い目に合わせて……悪かったな」
「酷い目??」
「あ、記憶消したんだったな。ならその方がいい。その後、お前を抱いて思ったんだ。"こいつが望むんなら叶えてやりたい"って。でもペンダントを残したのは──」
「待って!?今…なんて言った!?!?」
真面目に聞いていた俺は突拍子もない一言でソファーから身体を跳ね上がらせた。
ペンダントの事ももちろん気になる。
でもそれ以上に俺達の関係性を物語る言葉が頭の中を駆け回った。
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