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もしも母親が生きていたら。
そう考えた事は何度もあった。
だけどそれはあり得ないと思っていたからだ。
「……嘘だ」
「なぜそう思う」
「だって母さんは……っ、死んだって…」
俺は頭の中が混乱して目の前の現実を否定してしまう。
本当なら再会を喜ぶべきだ。
けど俺は心の準備はおろか予想もしなかった出来事に困惑し、疑うことしか出来ない。
「俺もそう思っていた。スバル、貴様が死んだものだと…。だがそれは、この女が貴様を生かす為に吐いた嘘だったようだ。現にお前はこうして俺の目の前にいる」
アランは鉄格子の鍵に手を翳してその扉を開けた。
簡単に無くなった俺と女の人との隔たりは見えない孤高の壁で遮られているような気分になる。
俺にとってはそれ程までに高く、アランの要求は難儀なものだった。
「どうした?せっかく母と再会できたのだ、嬉しくはないのか?」
「でも、もしかすると……、この人は俺を捨てたのかもしれない」
「捨てた?」
「だってそうだろ…?俺は混血だから……忌み子だってあんたも言ってただろ!?」
戸惑う原因はそこにもあった。
俺を身籠ったから仕方なく産んで…。
死んだ事にすれば今までと変わりない生活が送れる。
俺の卑屈な考え聞いたアランは珍しく笑い声を洩らし、拒む俺の腕を掴んで無理やり牢屋の中へと押し入れ再び鍵をかけた。
「っ…!!何するんだ!?」
「お前ならこの女を目覚めされられるかもしれん、声をかけてみろ。この機を逃せば貴様は二度と母に会う事もあるまい」
彼はそう言って俺を残し、足音を響かせながら階段を登って行った。
でも確かにアランの言う通りだ。俺は後どのくらい保つのか分からない。
だったら最後に俺を産んだ人の声くらい聞いたって罰は当たらないはずだ。
色白の透き通った肌が時の静止を知らしめる。
年は俺とあまり変わらない気がする。
「っ……あの……、聞こえ、ますか?」
本当に生きているんだろうか?
その疑問は僅かに上下する胸が代わりに答えた。
だが相変わらず反応は返ってこない。
きっと目覚めるつもりなんかないんだ。
そう思うと少しだけ緊張が解れたのか、俺は安易に彼女の手に触れた。すると……。
「っ!!」
指先にピリッと電気のような感覚が走り驚きで後退れば固く閉じられていた瞼が細く開き、淡いグレーの瞳が光を灯した。
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