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「お前の親友って、さっきのユキってやつ?」
弁当を受け取りながら聞いてみたら、真島はまだ少し赤い顔をしたままニコリと頷いた。
「うん。…と言っても向こうは俺の事親友と思ってくれてるかは分からないけどね。でも高校入ってから一番仲良くて、なんでも相談出来るいい奴なんだ」
「へー」
自分で言うのもなんだが、真島ってマジで人を見る目がないな。
あのユキってやつ、真島の前じゃかなり良い子ちゃんにしている感じだったが、昨日のアレは初対面には失礼すぎるほど口悪かったぞ。
まあ真島の交友関係に口出すつもりはないし、俺に害がなければなんでもいい。
と思ったが、よく考えたらすでに害受けまくってんじゃねーか。
ともかく今は弁当だ。
「おお、ハンバーグじゃん。超好き」
「…良かった。その、高瀬くんお弁当いつも喜んでくれるから、最近作るのすごく楽しくて」
実際かなり喜んでる。
この先別れたとしても、弁当だけは毎日作ってもらいたいくらいだ。
あ、ちなみにちゃんと弁当代は渡している。
真島はいらないと頑なに言っていたが、さすがにそれじゃあただのパシリだ。
弁当タイムを終えて、また寝るかなーなんて欠伸をする。
ちらりと真島を見たら、何かいいたげにモジモジしていた。
人の顔色を伺っているのか、ちらちらと視線を感じる。
なんなんだ。
言いたいことあんならハッキリ言え。
「…あの、高瀬くん。その、さっきなんだけど…」
煮え切らない態度に若干イラッとするが、まあ落ち着け俺。
真島は何か言いづらそうにしていたが、意を決したように俺に視線を合わせると口を開いた。
「お、俺の名前っ。呼んでくれたよね?」
「え?ああ、そういや呼んだな」
何かと思えば、そんな勇気出して聞くことかよ。
完全に真島の親友に嫌がらせするために呼んだだけだったが、真島の方が効果テキメンだったらしい。
「ごめん、変かもしれないけどその、嬉しくて…。俺すごいドキドキしちゃって…」
何もこいつが変なのは今に始まったことじゃない。
が、心臓に手を当てて切なげに顔を俯かせる真島を見ていたら、なんだか俺は悪戯心が沸いてしまった。
「へー、そんなに嬉しいなら、奏志って呼んでやろうか?」
「わっ!ちょっ…!待ってっ。まだ心の準備がっ」
「なに、照れてんの?」
真島の反応が面白くて、俺は身を乗り出すと顔を傾けて真島の顔を覗き込んでやる。
あらら、すげー顔真っ赤。
これ見ると、咲希ちゃん俺のことマジで好きじゃなかったんだなーとなんか痛感するというか。
「ほら奏志。こっち見ろって」
完全に俺は調子に乗っていた。
焦ったように狼狽える真島の反応を、性格悪いなと思いつつも心の底から楽しんでいた。
こっちを見ようとしない真島の頬に手を伸ばした時、突然その手を逆に掴まれた。
「――えっ」
気付いたら、真島の顔を見上げていた。
突然の視点変更に一瞬頭が回らなかったが、それが真島に押し倒されているんだと遅れて気付く。
「…ちょっ、お前なにして――」
「ごめん、あんな風に言われたら…っ、俺我慢できなくてっ」
「は?我慢ってなんの――」
ちょっと待て、冗談だろ。
俺達男同士だろうが。
真島の顔が近づいてくる。
――やばい、キスされる。
そう思って反射的にぎゅっと目を瞑ってしまった。
…が、チュッと音を立てたのは予想していた箇所とは違った。
額にあてられた柔らかい感触に、どこか呆然としながら俺は目を開ける。
目の前で俺を見降ろす真島の視線は、酷く熱に浮かされたようでいて、俺は絶句したままその場から動けなかった。
「…ごめん、高瀬くんの嫌がることはしないつもりだったんだけどっ…でもごめんね。ちょっとでいいから。ほんの少しでいいから、触らせて」
そう言って真島は俺をぎゅうと抱きしめた。
まさかあの真島に押し倒されるなんて俺は思って無くて、たかがデコチューされただけなのにえらい尻込みしてしまった。
「は、離せっ」
慌てて目の前の体を押しのける。
真島の顔を見たら、何かやってしまったという青い顔に変わっていた。
「ご、ごめんっ。もうしない。もうしないからっ…」
そう言った真島はいつもの挙動不審な真島に戻っていたが、俺はなんだか居心地が悪くなって目を逸らした。
そうか。馬鹿か俺は。
こんな当たり前のことに気付いていなかったとか。
悔しいがいまだに驚きが収まらず、心臓は変にバクバクしたままだった。
分かっていたはずだが、分かっていなかった。
俺が女の子にしたいと思っている当たり前のことを、真島は俺にしたいと思っている。
そんな当然のことを、今更ながら俺は痛感していた。
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