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「はい、あーん」
「絶対しませんよ」
「なんでよ」
唐揚げを俺に向けてくる先輩に、じとっと目を細める。
先輩のペースにのせられてたまるか。
「というか貞男も昨日言ったけど、俺今付き合ってるやついるんですよ。誤解されたら面倒なんでもう関わらないで貰えますかね」
「真島くん?」
まさかのドンピシャで当てられて、ギクリとする。
この人冗談なのか本気なのか分からないところあるんだよな。
「…冗談止めて下さい。俺がホモじゃないの知ってますよね?」
「寂しがりやさんなのは知ってるよ」
先輩はニコッと笑った。
この間からそれを言われるが、別に俺は自分が寂しがりやだとは思わない。
「誰か常に側にいないと不安だもんね?真島くんはいつでも一緒にいてくれるんだ?」
「…だから違うって」
「――私今ね、誰もいないんだよ?」
先輩はどこか淋しげに俺を見た。
その表情を俺はよく知っていて、胸がチクリと痛む。
寂しいんだと、一緒にいたいんだと、あの頃よく言われた表情。
「…誰もいないからって俺の所来ないで下さいよ」
「だってうめのんは絶対相手してくれるもん」
なんだその自信は。
いい加減ラチが明かない会話を続けていてもしょうがない。
「そもそも先輩誰も好きにならないじゃないですか。すぐにいなくなるのなんか当然ですよ」
言ってやったら、先輩は少し拗ねたように口を尖らせた。
やべ、ちょっと言い過ぎたか。
なんて思ったが、先輩は俺の反応にふふっと悪戯に笑った。
「――ね?だから私達似てるでしょ?」
その言葉に何も返せず、つい俺は視線を逸らしてしまった。
この人が俺に対して踏み込んでくる理由は最初から明確で、本気で付き合っている奴なんかいないと思っているからだ。
そしてそれはその通りだった。
実行委員の仕事では、貞男のおかげか先輩はそこまで俺に近付いてはこなかった。
ナイス番犬。
ナイトからいつの間にか番犬に降格しているのは、この間の帰りの事を根に持っているからでは決して無い。
それでもいまいち先輩を突き放しきれていない感はあったが、まあそのうち新しい男出来れば俺に構わなくなるだろう。
なんて軽く考えていたら、放課後の実行委員の仕事終了後、帰り際に先輩は耳を疑う発言を残していった。
「真島くんて、思ってたより可愛い感じの子なんだね」
「――は?」
硬直している俺を他所に、バイバイ、と手を振って先輩は教室からでていった。
ちょっと待て。
慌ててその背中を追う。
「ま、待って下さいよ。真島と話したんですか?」
「うん。ここ来る前にね。うめのんのお友達特権で、まさかアイドルとお話出来ちゃうなんて」
茶化すように先輩は笑う。
だが俺は全然笑えなかった。なんで真島と関わるんだ。
それは先輩が俺を介して真島を狙っていると思えばすんなり納得する話だが、この人の場合は絶対に違うと言い切れる。
「…ふーん、やっぱ真島くんなんだね」
「え」
言われて、自分がいかにアホな行動していたかに気付いた。
こんな態度をとったら、真島と付き合っていると言っているようなもんだ。
だが先輩はそれ以上何も言わず、今度こそ『またね』と俺に微笑して帰っていった。
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