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「うわっ、どうしたお前」
「え、なにが」
教室に戻ったら、ヒビヤンがギョッとしたように俺を見る。
別にさっきと何も変わっていないが。
まさかあの一件で真島みたいにビービー泣くなんてこともありえないし、そんな驚かれる要素はないはずだ。
が、ヒビヤンはなんか困ったように髪を掻いた。
「…よし、俺店番終わるからお前ちょっと付き合えよ」
「は?模擬店回るなら彼女と回れよ」
「アイツとじゃ行けない所なんだよ」
「なんだそれ興味ある」
ヒビヤンは何気に俺の気を引くのが上手い。
少し疲れて休もうと教室に戻ってきたところだったが、意味深な言い方されて気になった。
行こうぜと腕を引かれて、促されるままヒビヤンの誘いにのってみる。
連れて行かれた先は、一つ下の学年の教室だった。
『ふぃーりんぐかっぷる』と頭悪そうな字体で看板が立て掛けられている。
なるほど。
まあ簡単に言うと、お遊び要素満載な超簡易合コンだ。
「これ気になってたんだよなー。彼女いると回れないだろ」
「別にこんなのその場限りのノリだし何も問題ないだろ」
「バーカ、お前はそんなんだから真島に突き放されんだよ」
「うわっ」
何だこいつ。
何も言ってないのにドストレートに心を抉ってきた。
「あ、やっぱり?元カノちゃんと一緒にいる所バレたのかなーと」
「うるせーな。ほっとけよ」
そう言って俺はレンタル屋の18禁コーナーみたいに怪しげな教室の暖簾をさらっとくぐる。
概要は男女比率3対3で行い、司会者の出す質問に一人ずつ答えて、最終的に誰がいいかと男女一斉に番号札を掲げる。
運良く同じ番号を掲げられた男女は晴れてカップル成立というわけで、記念写真を撮って必要ならば連絡先を交換して終了という実にシンプルな流れだ。
が、女の子が二人しか集まらず、結局女側に男が一人入ることになった。
もうさっそくグダグダじゃねーか。
だが無駄にギャラリーはいて、確かにこういうのって自分で参加するより見てる方が面白いんだよな。
好きなタイプはなんですか、とかどうでもいい数回の質問の後、ようやく最終的に札をあげる段階へ行く。
どちらの女の子もそこそこ可愛らしかったが、別にこんな場所でお持ち帰り出来るわけでもない。
ならばちょっと笑いをとってやろうかと、相手側の人数合わせの男に札をあげてやった。
「えっ」
まさかの相手の男も俺にあげていた。
男同士のカップル成立!とギャラリーが盛り上がる。
まあある意味もっと面白い展開に発展してよかったが、なんか微妙な気持ちだ。
そしてヒビヤンはちゃっかり女子の一人とカップル成立している。
「どこのクラス?面白かったから連絡先交換しようよ」
記念写真後、まだ悪ふざけを続ける男に女ギャラリーが盛り上がる。
サービス精神旺盛だな。
「はは…また今度な」
愛想笑いでそう言って、腹を抑えて笑っているヒビヤンを連れて俺は模擬店を出た。
「いやあお前に持ってかれたわ。俺もアイツに番号札あげればよかった」
「ついでにもう一人の奴も全員アイツにあげたらもっと笑い取れたかもな」
冗談言い合いながら笑って廊下を歩いていたら、ふとオレンジになりかけの空が目に入った。
もうこんな時間か。
そろそろ一般公開が終わり、ほどなくして文化祭も終了だ。
思い返せば結局一日中俺は遊び呆けてただけだった。
俺の意思はどうであれ、模擬店の制覇率はかなりのものなんじゃないだろうか。
こんなに遊ぶ時間があったなら、少しは真島の気持ちを組んでやればよかったかもしれない。
もし俺が昨日の段階で周りなんか気にせず真島と回ることを了承していたら、あんな風にはならなかったんだろうか。
なんて今更な事を思えば、気持ち悪く胸がざわついた。
なんでだよ。
再び上がらなくなるテンションに視線を落としたら、ヒビヤンにポンと頭を叩かれる。
「あーもう。どうせ大丈夫だから自信満々に反省しとけ」
「はあ?」
なんか日本語おかしくね。
ポカンとしていると、ヒビヤンは視界に入った団子屋を指差した。
「よし、じゃあ最後にあれ食おうぜ。お前の奢りで」
「…俺はお前に文化祭実行委員押し付けられたの忘れてないからな」
じろりと睨んで言ってやったが、俺も食いたくなったので結局団子屋に向かうことにした。
ちなみに奢ってやるつもりは毛頭ない。
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