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「いやマジで無理。俺付き合ってる奴いるし」
「誰ですか?絶対俺を選んで後悔させませんよ。一度試しでいいんで付き合って下さい」
「無理だって。第一運命とか言ってるけどさ、俺あの時は笑い取ろうとしてお前に札あげただけだから」
思いの外食い下がってくる七海を鬱陶しいとあしらう。
文化祭のフィーリングカップルで偶然コイツとカップルになりはしたが、まさか本気でいいと思って札を上げたはずもない。
それを運命とか勝手に勘違いされても困る。
というか誰がどう見ても勘違いしねーだろ。
「知ってますよ。でも運命ってそういう偶然の出会いみたいなものでしょう?」
七海は全く信じて疑わない、と言わんばかりに笑顔を作ると、一步足を進めて俺の前に立ち塞がる。
おい、近寄るな。なんかされそうでこえーわ。
「先輩、付き合ってる人ってちゃんと好きなんですか?それとも可愛いから?俺高瀬先輩は相当遊んでるって聞いたんですけど」
「はあ?誰に聞いたんだよ」
「先輩の女友達に。俺顔は広いほうなんで。えーと…咲希先輩って言ってたかな」
ああ、いたな。そういえば。
あれは真島と付き合ったばかりの頃か。
最後に『最低』と罵られてゴミを見る目で終わったが、そんな事言われるとかまだ俺に恨みでもあんのか。
まあ間違ってはないが。
「そういう時期もあったけど。今はやめたんだよ」
だからさっさと諦めろ、という視線で見上げたら、七海はちぇ、と子供が拗ねたように口を尖らせた。
表情だけみれば、どこからどう見てもまだあどけなさの残る後輩、という感じなんだが。
「じゃあ今付き合ってる人のことは、本気で好きなんですか?」
「…っ」
真島の顔が思い浮かんで、じわりと顔が熱くなる。
好きかどうかと言われるとそりゃ嫌いなわけがない。
だがこの気持ちが恋愛感情なのかと問われれば、本当にそう思っていいのか正直迷う。
それでもただの情だけで男とキスできるのかと言われると――ってなんで俺がこんな少女漫画みたいな反応しなきゃいけねーんだ。
背景に今シャボン玉飛んでたわ。
「うるせーな。なんでもいいだろ。ともかくお前と付き合う気はない」
もう顔をそむけてピシャリと言ってやる。
そもそも今は真島相手でいっぱいいっぱいだ。
色々と考えなきゃいけないこともあるのに、他の恋愛要素なんかいらねーんだよ。
――と、そう思い至ったところでふと気づく。
「…お前そういえば。ゲイなんだっけ」
「え、はい。昔から隣に住んでるイケメンお兄さんが色々教えてくれたんで、頭真っ白になるほど気持ちいいこと先輩にしてあげられますよ」
「純粋な目でそういうこと言うのやめろ」
そしてそのイケメンお兄さんは、高校生の男相手に何を如何わしい事をしてるんだ。
コイツの性事情とか知りたくねーんだよ。
内心でツッコミつつも、俺は少し視線を泳がせてから首を擦る。
コイツに、少し聞いてみたくなった。
「…えっとさ、男同士で付き合うとか…お前この先の事に不安持ったりしねーの」
「――え?」
俺の言葉に七海がキョトンとしたように目を丸くする。
俺もコイツに何を聞いてるんだと思ったが、ソッチ方面ではある意味先輩となっているコイツに、男同士としての在り方を聞いてみたくなった。
「もしかして先輩っ、付き合ってくれる気になったんですか?」
「それは絶対ない」
パアッと七海が顔を明るくしたから、即答する。
コイツに気を持たせるような態度を、一つだって取る気はない。
七海はむう、と一度頬を膨らませたが、考えるように視線を持ち上げた。
「…そうですね。まあもちろん一般的に見たら踏み外してはいるんでしょうけど…」
そう言ってから、俺に向き直る。
えげつない言葉をサラリと口にするくせに、その瞳は無邪気で純粋無垢な少年のようだ。
すっと伸びてきた長い指先に、不意に顎をすくい取られた。
「――でもね、先輩。好きになっちゃったらどうしようもないと思いますよ?」
そう言って七海は表情を綻ばせると、俺の額に唇を落とした。
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