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「え?おい。噓だろ。マジで」
教室に帰ったらヒビヤンにドン引きされた。
「いやお前とりあえず保健室行こう。口から血出てんぞ」
「行かねえ」
「マジかよ。じゃあちょっとこっち来い」
そう言ってヒビヤンに引っ張られた先は便所だった。
タオルを湿らせて、渡される。
鏡を見たら確かに思いっきり頬を殴られたせいで内出血してるわ、唇は切れて血が出ているわで散々だった。
いやマジ就職面接後で良かった。
「保健室行きたくねーなら救急箱貰ってくるから。ちょっと待ってろ」
「…え、別に大丈夫だけど」
「いいからここにいろ」
予想外にヒビヤンが面倒を見てくれた。
素直に保健室なんか行ったら、どう考えても貞男と鉢合わせするだろう。
思いっきり殴ったからアイツも俺と同じような事になっていた気がする。
美人の顔を傷つけてしまったなと思っても、後悔はない。
別にアイツ男だし。
待っている間に予鈴が鳴ってしまって、しばらくの後ヒビヤンが帰って来た。
「あー悪い。後は自分でやるからヒビヤン授業行けよ」
「は?皆勤賞じゃあるまいし。それよりその怪我、結城か」
どうやら保健室で会ったらしい。
「あっちは真島に介抱されてたけど。一体お前ら何の話して――」
「おい、余計なこと言ってねーだろうな」
思わずヒビヤンの手を掴む。
が、聞いておいて俺は返事を待つ前にあっさりその手を外した。
ヒビヤンが言うはずがない。
コイツは誰よりも鋭い奴だ。
「言ってねーよ。でもお前真島に会ったらどう言い訳すんだその顔」
「…しばらく会わねえ」
「そりゃ無理だろ。毎日欠かさずお前の顔見ないと気が済まないような奴だぞ」
言いながらヒビヤンは俺の手当てをしてくれた。
というかヒビヤンにまで既にそう思われているとか。
貞男は真島に介抱されていたらしいが、どうやらその調子なら俺との事は言っていないだろう。
というか言えないはずだ。
真島に俺を殴ったなんて言ったら、貞男が真島にどんな顔されるかなんて、俺のほうが怖い。
「いやあ…しかし殴り合いとか青春だねえ」
「その後青空を見上げて二人で寝そべるクダリはなかったけどな」
「それにしても珍しいな」
「何が」
ヒビヤンが消毒液を付けたガーゼで、俺の口端を抑える。
ピリッと痛みが走って、思わず顔を歪ませる。
「…痛い」
「はいはい。いい子だから我慢しような」
子供をあやすような口調で言われた。
じとっと目を細めると、ヒビヤンはふっと息をもらして表情を緩める。
「いやさ、高瀬がガチで怒るとか珍しいなって。お前面倒なの苦手だから、大抵のことは適当にかわすだろ」
言われてみればそうかもしれない。
とはいえ今回は貞男が先にぶん殴ってきたから、こっちも頭にきたのはあるが。
それに遅かれ早かれ、貞男とはいつかこうなるような気もしていた。
アイツは俺と出会った頃から、俺を殴りたい気持ちでさぞかしいっぱいだっただろう。
ヒビヤンはさくっと俺の手当てを済ませ、これで冷やせと清潔そうな布地に包んだアイスパックを渡してくれた。
それにしてもなんかコイツ、手慣れている気がする。
というかマジで手際がいい。
「…お前なんか資格でも持ってんの?それか喧嘩慣れしてんのか?」
「は?…ああ、俺一応実家が病院だからな。まあこれくらいは」
「マジかよ」
どうでもいい事実を知った。
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