アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
玲太とハチ公②
-
「お待たせ、行こう。」
玄関に、靴を履いたまま座って待っていた晃に声をかけ、
おう、と返事をした晃と、玄関を出て鍵をかける。
「さっむ…!」
ぶるっ、と隣で身震いする晃。俺の家に来るだけの予定だったため、適当な服装だから、というだけではない。
12月も後半に差し掛かり、夜の気温は優に10度を下回る。
特に、今年は例年に比べ記録的な寒さだという。
(あいつは凍えたりしないだろうか…毛布も用意しとけばよかった…)
これから会いに行くハチ公のことと、まだ12月でこの寒さということを思い、歩きながら、そんな心配が頭をよぎる。
「おい、どーしたんだよ?」
声をかけられ、ハッと意識を戻す。
無意識に、歩く速度が速くなっていたらしく、晃が後から少し小走りで追ってきた。
「ごめん、考え事してた。」
隣に追いついた晃に、そう謝る。
駅まですぐの道のりを、急いだって仕方がない。
ハチ公はいつも同じ場所に、同じように居るのだから。
「それくらい、カブキのことも可愛がってくれりゃあいいのになあ。」
寒さで耳を赤くし、口を尖らす晃はいつにも増して幼く見える。
俺より背が高いのが気に入らないが。
「ばか、別に可愛がってはねえよ。」
大の男が、駅前の犬のもとへ通っていることが恥ずかしくて、晃の言葉を否定する。
だから誰にも見つからないように、深夜にわざわざ通っていたんだ。
今日はまだ電車が出ている時間。23時を少し過ぎたところ。
ハチ公はどんな顔をして飼い主を待っているのだろうか。
喉の奥がぎゅっとするような、不思議な気持ちを押し込めるように、首に巻いたマフラーに顔を埋める。
俺もコンビニでなんか買おうかなー、なんて話す晃の声に適当に相槌を打ちながら、駅への道を歩いていった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
16 / 20