アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
酩酊
-
新しくも古くもないマンションの扉を開ける
クラっとするようなジャズの音色
「んー…んー…んーんー…」
心地よい低音がメロディを口ずさむ
きっと安物のチューハイも高価なワインも関係なしに飲んでいるんだろう
「お邪魔します」
多分この程度で気づきゃしないだろう
何も無い廊下を進みリビングへの扉を開く
「んー?
あぁ、李紅」
古賀屋 李紅(こがや りく)
それが俺。
そして
目の前でアルコールを煽っている彼は
榊 千皓(さかきちひろ)
「ちひろくん。また飲んでるの」
「ふふ。
怒らないでー
笑った方が、いいよ」
とろとろになってて
目が据わってる。
なんか、目の奥に柔らかいものが感じられなくて少し怖い
「そんなこと言って。」
「ね、李紅。
おいで」
だけどこの人が僕を求めていることが分かるから
僕はやっぱり嬉しくなる
「…うん」
ぎゅっときつく抱き締められて
苦しくなる
骨ばった手の甲の感触にどきどきする
首元に顔を埋めてすんすんと嗅がれる
ぺろりと舐められる
耳たぶを少し噛まれる
そのまま少しの間吸われる
「李紅を食べちゃいたい
閉じ込めて俺だけのものにしたいし
俺なしじゃ生活できないような姿にしたいし
何もさせずにベットに縛り付けて一緒に寝るんだ
そしたら筋肉が無くなって、本当に歩くことも出来なくなるだろうね
そしたら俺が首輪をつけてあげる
李紅が一人でなにかをする力を奪えば1人では生きられないでしょ
そしたら、もし俺が死んだらきっと李紅も死んじゃう
あぁ、李紅の全部に触れたい
心臓も、肺も、血液だってすべてに触れていたいのに…
いっそミキサーで2人ともぐちゃぐちゃになっちゃえば李紅のすべてに触れるかな
ねぇ、李紅、俺のこと怖い?」
ふわふわとした笑顔を浮かべているであろう人
多分怖いと言えば、極端なこの人は
俺をこの部屋から出すことは永遠になくなるだろう
でも、俺は別にそれでもいいかなって思うんですよ
俺を撫でるその手が柔らかいその声が
俺のモノでいてくれれば
それでいいと思うんですよ
「怖くないです
あ、撫でるのやめないでください」
まぁ、つまり怖くないってことなんすよね
うん、永遠とは思わないけど
なんて言うか、続く限りはこのままでいいんすよ
壊れても壊れなくてもそれが俺らじゃないですか
「俺は李紅と居られるんなら
まぁ、いいかってかんじなんだけど」
「俺もそんな感じっすよ」
「病める時も健やかなるときも…忘れちゃった
ね、李紅。俺李紅のこと好きだよ」
「俺も好きです
俺もちひろくんのこと大好き」
黒髪はくせっ毛で
タバコと酒の匂いがする
でも嫌じゃなくて
柔らかい
「ねぇ、もう寝なよ
きっといい夢が見られるから」
「起きるまで傍にいてくれるなら」
「李紅がそう望むなら。」
うん。なんだか眠たくなってきた
俺はこの時間が少しでも続くなら
なんて言うか、そのほかはどうでもいい
あなたがそばに居てくれるあいだは
俺はずっと李紅で居てあげる
たとえ愛した人が俺の名を読んでくれなくたって。
「おやすみちひろくん」
「おやすみ」
「おやすみ紅佳(こうか)」
俺に名を呼ばせないのは
過去じゃなくてお前なんだと
まぁ、言えるわけはないか
俺たちの酔いが醒めないうちは
大好きだよ李紅ーー。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
3 / 28