アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
キスをして
-
甘ったるい匂いが充満している
酷く不快だ
冷蔵庫を開ける
缶コーヒーが切れたらしい
酷く不快だ
「ねぇねぇミキくん
あたしのこと好き?」
「あー、そういうの
めんどくせぇよ…」
「ひっどーい!!」
好き嫌いでいうと嫌い
香水は臭いし
声は高くてうるさい
爪は長くて痛いし
抱き心地も最悪
こいつはもう終わりかな
『ミキくん、今日一緒に飲まない?』
……えっと、ユカ…か。
こいつはどこで会ったんだったか
まぁいいや
可愛かったら合えば思い出すだろうし
「ミキくん
久しぶり。
遊上 細(ゆかみ ささら)です
きっと覚えてなかったでしょ?」
「……男か」
「男です」
「…帰る」
「待って、大丈夫
ちゃんとミキくんを満足させる自信あるよ」
「あ?こちとらセックスしないと寝れねぇんだよ
お前に用はねぇ。」
「大丈夫
それも、大丈夫だから」
「まじ意味わかんねぇ」
「そう言わないで
あの店行こう」
半分詐欺みたいに強引なこの男に
「いっただきまーす」
何故か俺はついてきてしまった
力が抜けた。
なんだこいつ
もういいや。どうせ今日はもう誰も捕まらないだろ。
「……なんなわけ。
つか誰だ」
「…?遊上 細」
「いや、名前じゃなくて
どこで会った…」
「んー…そうだよね
えっと、だいぶ変わったから…
僕の事…忘れちゃったよね……」
雷に撃たれたかのような衝撃を受けた
覚えてる
困ったように笑う触れれば溶けてしまうような繊細な人間を
覚えてる
「…ゆか………なの…か…」
「あ、思い出してくれた?ミキくん」
三木 青嗣(みき せいじ)
俺がまだ、高校生だった時出会った
そいつを
「………ミキくん」
「あぁ、ゆか」
「なんでみんな楽しそうなんだろう」
「そりゃ好きなやつといるからじゃねぇの」
「ふーん。」
「お前は好きなやつとかいないの?」
「んー。
好きって何を持って好きって言うの?」
「見てるとドキドキするとか
一緒にいるとたのしいとか?」
「へぇ
ならミキくんには好きな人がいるんだ」
「……あぁ」
「どんな人?
どういう所が好き?
その人をどうしたいと思う?」
「……抜けてて、千切れそうな糸
危なっかしくて俺が持ってないとどこか行ってしまいそうな風船みたいで
でも別にそいつは俺が居なくても生きていけるんだ
俺は……きっとそいつを殺したい」
「へぇ
いいな。
そんなに好かれてるなんて」
「…………」
「本当に、ゆか……なんだな」
「うん。
久しぶり。
ミキくん」
「ゆか………俺…」
「ごめんね
ミキくん
僕、きっと君をたくさん傷つけたんじゃない?
寝れないって言ってたの、僕のせいでしょ」
「ゆか……謝るのは
…俺の方だろ………」
「え?どうして?」
青春を捧げた恋だった
永遠に心の中に囚われた記憶
俺が背負った罪の記憶
そうだ、俺はあの夜から眠れなくなったんだ
「ミキくんには彼女なんてすぐに出来るんだろうね」
「できないよ」
「だってモテるじゃん
好きな人は?」
「好きな人とは、付き合えないんだよ」
「どうしてそう決めつけるの?
告白したら付き合えるかもしれないじゃない」
「むり」
「無理じゃない」
「むり」
「どうして?」
「なぁ、なんでそんなに聞くんだよ」
「わからない」
「わからないなら聞くな」
「わからないから聞いてるんだよ」
「しつこい!」
「ごめんね」
「…」
「うらやましいのかもしれない」
「なにが」
「僕はミキくんにそこまで想われているその子がうらやましいんだ。
僕だけのミキくんだったのに他の子のものになるのか惜しいんだ」
「……俺が好きなのがお前だと言ったらどうする?」
「それは嬉しいよ
でも違うんでしょ」
俺は咄嗟に押し倒した
「どうだろうな」
「ミキくん?」
「ゆかは俺をどうしたい?」
「…別に」
「…………」
「……キス…?したの?」
「……………」
「ミキくん?」
「…………………」
「や、やだ!」
「……ゆか」
「…ミキくんじゃない!!!」
「…………………ごめん…ゆか」
珍しく忙しないゆかの足音
それが遠ざかっていくのが寂しい
「むしろ傷つけたのは俺だ
ゆか…あの時本当に悪かった
気持ち悪かっただろ
ただ本当に好きだったんだ
本当に…」
「ううん
僕もあのあと好きがなんなのか知るために色んな人と。
それで分かったんだ
何度も体を開いてそうしたらある人が言ったんだ
僕を殺したいって
沢山殴られて、でも死ななかった
痛くて心臓がドキドキして自分の血が目の前で散った
好きってこういうことだって思った」
そういうプレイなのか本当に殺そうとしたのかDVなのか
「……そいつが好きなのか?」
「ううん。
ミキくん、まだ僕のこと好き?」
「…………ゆかを嫌いになる日なんて一生来ないくらい」
「ねぇミキくん
お家に連れて行って?」
「………ゆか、それは」
「ミキくん僕のこと好きでいてくれてるんでしょ?」
好きだ
死ぬほど好きだ
自分のせいでボロボロのゆかを見てもそれが愛おしいとさえ思える
それほどまでに愛しているんだ
「…わかった」
間接照明の薄暗い部屋
女の残していった仄かな甘い香り
床に転がる酒瓶
今日はきっと一睡もできないだろう
「ミキくんの匂いと女の匂いが混ざってる
僕、この匂い嫌だ」
「………」
「ねぇミキくん
今日は僕じゃダメ?」
「…いや…それは……」
寝室とゆか
「ねぇミキくん
僕のことささめって呼んで?
それが一番そういう気持ちになる」
ニコリと月の光の入る部屋で笑うそいつは
雪のようで、人間離れした何かを纏っている
「わかった
細
ただ、俺のことも青嗣って呼んでくれ」
「ん。わかったよ
せいじくん」
「くんはいらないせいじ だ」
「ふふ
わかったよせいじ」
「……細は…変わったな」
「…全部せいじのことを考えて生きてきたんだよ」
「かわいい」
「きっとせいじの満足できる僕になっているよ」
壊れているのに気づいていない
可愛そうで可愛い
全部全部俺だけを考えて生きてきたなんて
「かわいいよ」
「じゃあ、抱いてくれるでしょ?」
「………あぁ」
するする脱いでいく服の中はきつく残る鬱血痕と傷跡
白いガーゼと縫い跡に痣
俺を想って傷つく体を抱きしめた
「……せいじ、僕を殴らないの?」
「殴らないよ」
「僕のこと嫌いになった?」
「好きだよ」
「……せいじ?」
殴られるだけを愛と思っている体は無数の傷跡だらけで痛々しい
「痛いのは好き?」
「痛いのは嫌いだけど好きだから痛いんでしょ?」
「…俺はささめの嫌な事はしない」
「でも僕を殺したいんでしょ?」
「殺したい
俺の愛で溺れて死ねばいい」
「せいじ…?」
抱きしめたまま細をベットに押し倒す
「細、怖いことは何も無い」
「ほん、とうに…?」
「うん」
不安げな顔は俺を見てる。
どうしよう。
好きだな
「…ん、くすぐったい」
首筋に顔を埋めてキスをする
何度も何度も
「細、愛してるよ
俺はお前のことが死ぬほど愛しい」
「…うん」
何度も何度もキスをして
たくさん愛していると呟いた
囁くのとは違って自己満足だ
呟いた声が細に届いても届かなくてもいい
ただ、呟いた
どうしても愛している
「ね、細
俺はお前を傷つけたくない。」
「でも傷ついてる僕を見て興奮するんでしょ?」
「…確かにそうだ
だけど抱かない。
今日は…」
「…!!せいじ…!?
それじゃあ…僕……」
今日俺にだかれるそれだけのためのささめ
だけど、壊れたささめは傷ついてることに気づいていない
ここで俺が抱いたら本当に全てダメになる気がした
「でも一緒に居てくれ」
「……でもそれじゃあせいじは眠れない」
「いい。
一晩中お前を感じていられればそれで」
「…………わかった」
ベットにそっとささめを横たえて
俺も隣で眠る
苦しくならないように抱きしめて
「……シたくなったら言ってね」
「わかったから黙ってろ
ここで寝てればいい」
「…うん」
すーっと思い切り息を吸って目を閉じる
ささめはガラス彫刻のように美しくて
砕けた飴細工のように扱いずらい
こんなやつを俺は10年も思い続けてる
俺は、馬鹿だなぁ
眠れないと思っていたのに目を閉じてまた開くと朝になっていた
腕の中の温もりはすっかり冷えてる
「…っささめ」
「…なーに鉄面皮のせいじ」
「………いなくなったかと思った」
「僕が布団から出てすぐに目覚めたくせに」
「…あのな!
あの、俺!今日眠れたんだ!!」
「ぐっすりだったね」
「おれ、お前と話さなくなってからセックスしないと寝れなかったのに、添い寝だけで眠れたんだ…」
「…うん」
「お前今どこにいるんだ?」
「ビジホ」
「………もし、良かったら家に住まないか?」
「…………俺が断ったらせいじは毎日女の子とエッチして眠るんだもんね」
「……そう、なるな」
「………断れないじゃん」
「………………細」
「ん?」
「好きだ」
「僕も好き
本当に、死ぬほど」
「付き合ってほしい」
「……うん」
「……やっとお前の顔を見られる
……お前の夢を見られる。
好きだ」
「…いつも、想っていたよ
せいじ会えてよかった」
10年たったこいつは
ボロボロで
昔とは全く違うけど
纏う空気がこいつは細だと言っている
俺は細が好きだ
その存在が纏う空気が
こんなに美しいものはどれだけ探したって他にはないから
もう二度と離したりはしない
何処へも行かない
何処へも逃がさない
どれだけ崩れたって揺らぐ必要なんかない
俺は細が好きだ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
10 / 28