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鈴のような
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その日、思い立ってドライブに出かけた
知らない道を歩いてみよう。
そんなことを思って。
俺の家は神社で、それ以前の祖先は昔拝み屋だかをしていたらしく
時々霊力の強いものが産まれる
生まれたら髪を伸ばし消して切ってはいけないなんてよくあるのかは知らんがそんな決まりがあった
そして5年に1度ひと月だけ真っ白な部屋に閉じ込められる
食料なんかはあるけど本当に何も無い真っ白な部屋
幼い頃は泣き叫ぶが次第に慣れる
強い力を持つ人間が俗世に触れてしまうと穢れるらしい
今までは我慢していた
けど彼女も出来ずに20歳
とうとう嫌になった。
ので、家出をすることにした
けど、あまり人と関わることがなかったせいか道を知っているはずもなく、あっという間に道に迷ってたどり着いた神社は何となく緑色
ただ、なんとなく物悲しい気持ちを呼び起こした
鳥居をくぐると
空気が違うのが分かった
悲しくて悲しくて仕方がない
そんな空気
シャン…
どこかで鈴の音が聞こえる
どうやらそれは御堂から聞こえるようだった
シャン……
聞き間違いではない
「神様…?」
泣いている
この人は1人で泣いている
「…く…っひ……ぅ…ぁあ……ふ…ぅ…っ」
詰まるように泣いているような声が聞こえた
無意識に俺は御堂の目の前まで来ていた
不思議と怖いとは思わなかった
シャン…
鈴の音にかぶるように泣き声が聞こえる
この人をこのまま泣かせてはいけない
悲しませてはいけない
近くに居たい。
「………だれ」
正しく鈴の音のような声
男か女かは分からない
「…私は藤紙 鈴山(ふじがみ りんせん)と申します。」
「…鈴山、なぜ…ここに」
泣きながらも声を出している
「お声が聞こえてきましたので、参りました次第です」
「……ここにいても何もあげられないよ」
「いえ、私は貴方様の慰めにはなれないのでしょうか」
「……媚を売ってるつもりなの?」
睨むように声が少し重たくなった
「…気に入らないのでしたら私を好きになさっていただいても結構です」
「…変なの
僕の声を聞いたら普通は逃げるよ」
少し呆れた様子でため息をつかれた
「……あまりに、美しかったので」
「お前女に好かれるだろ」
「そんなことはございません」
「………開けてもいいよ
おいで」
間を開けて声はそう言った
「失礼します」
戸を開けて入ったそこはひんやりと夏の暑さを癒してくれて、でもやっぱり悲しい感じだった
御堂は思ったよりも広くて
その真ん中にポツリと真っ白な男が横たわっていた
「……お前は綺麗だね」
視線をこちらに向けると一言そう言った
「…………あまりに…」
「僕が怖い?」
「滅相もありません
…ただ、あまりに…美しい」
「そう感じたんだ…
なら、そんな僕を見てどう思った?
…怒らないよ」
目を腫らして涙が溢れているのに無表情だった
「………申し訳ございません…悪い意味ではなく、純粋に…あくまで純粋に…手に入れて、閉じ込めたい…と……そう思ってしまいました…」
「へぇ、嬉しいな
僕なんかが欲しいの?」
ちっさい変なやつが急に烏滸がましいことをと思われただろう…
「……とても」
「あげようか?」
ニヤリと口角を上げたようにも見えた
「そんな!!
そんなこと…私には……」
「ねぇ、お前はとても霊力が強いね
とっても美味しそうだな。
僕をあげるからお前をちょうだいよ」
ゆらりと近づいてきてそんなことを言う
光のない瞳は神としてあるべき姿でない証だ
「……病んでらっしゃるのですか?
お辛そうに見えます…」
「……………やっぱり霊力が強いね。
僕は悪い神様だ。
お前は綺麗だ。
この手に掛けたくなる」
病んだ神は衝動に抗いながらも人を欲する
真っ白な男が自分の血に染まる光景が思い浮かぶ
それはきっととても綺麗だ
「それは、光栄です」
「変な人間だ
……ねぇ、髪でいいからちょうだい
僕はもうずっと食べていないんだ」
「…えぇ、結構ですよ
…貴方様はなぜ泣いてらしたのですか?」
「……内緒」
サラリと髪を撫でられる
いつの間にか後に座っていた
髪の毛を下ろすと1度をハサミを入れていない髪がさらさらと流れた
「蛇鈴白って言うんだ。
呼んでよ」
唐突に涙を拭いた彼はそういった
「蛇鈴白様?」
「……違う、蛇鈴白、様じゃない」
「………くちなわすずしろ…?」
「そう。
長いから鈴白でもいいよ
あとそんな堅い言葉使わないでよ
病んでしまって、もう誰もここには来てくれない
僕はその辺の名の知れた神様とかじゃないんだから」
「俺が、来ますよ
何度もここに戻って来ますよ」
「へぇ」
目を瞑って髪にそっと口付けする
いつの間にか頭が軽くなっていた
腰まであった髪は肩ほどの長さになっていた
シャン……
「鈴白?
どこですか?」
「……ここ」
いつの間にか鈴白は隣に座っていた
真っ白な彼は俺のそれよりも長い白髪をすくい上げては何かを考えていた
「どうかしたんですか?」
「うん
思い出したんだよ」
「思い出した?」
「僕は悲しかったんだ
ずっと
大切な人を食べたんだ
聞きたい?」
「……聞かせてください」
長い真っ白なまつ毛が伏せられ、赤い瞳を覆った
まるで大蛇のように白く艷めく髪はさらさらと輝いていたが果てしなく深い悲しみに沈んでいるようにも見えた
彼はきっと人がただ大好きなだけだったのだ
「元々この辺りには小さな集落があって
僕はそこの小さな神社の神様だった
そんな時、日照りが続いて大飢饉になった
その時に、人が贄として捧げられた
神社の巫女で僕のことを見ることが出来る数少ない人間だった。
猿轡を噛まされ、殴られたのかボロボロだった
巫女は神が人を殺せば病んでしまうことを知っていたんだ
だから抵抗した
あの子も、とても綺麗な髪だったんだよ」
「その人を食べたのですね」
「大切な人だった
でも、血がたくさん流れていて
もうすぐで死んでしまうところだった。
そうなれば彼女が愛した村人に彼女は殺されてしまう
それはきっとダメだ
彼女を殺すのは僕でないと
村人に人殺しなんかさせちゃいけないんだ
でも助けるには僕は弱かった
彼女を食べたあと
僕は雨を降らせた
ずっとずっと泣いて
そしたら大きな土砂崩れが起きて
それで、村からは人が消えた
一人残らずほかの地へ移った
僕とこの神社だけを残して」
笑っているのか泣いているのか分からない表情で天井を見つめていた
「人を愛していたんですね
鈴白は悪くなんかない
神として在ろうとした、だけ
人を愛していただけ……」
この人は縋るものもなく1人で泣いていた
ただ1人でずっとずっと
「鈴山…でももう、遅いんだよ
人から信仰されない神は消えてしまう
忘れ去られた僕は消えてしまう」
そう、この神社は随分と古い
きっと人が来なくなってから長い時間が経っている
ここを知っている人だってもういないのかもしれない
「でも僕は知っています
蛇鈴白と言う白くて美しい神が存在していることを
僕が依代になります
だからそんなこと言わないでください」
体内に神を宿し、時に体を貸す
それが依代
「そんなこと、言っていいの?
…本当に悪い神様なら
鈴山、お前を殺すことも出来るんだよ?」
白くて指の長い綺麗な手が首にかかる
少し力を入れられる
「………だから、俺はあなたに殺されるのなら良いと言っているのに」
少しずつ力は強くなって
やがて意識が朦朧とする
鈴白の頬を撫でて
あぁ、死ぬのか
なんて思う
綺麗だ
赤い瞳が涙に濡れている
泣かないで
「…鈴山……僕を蹴り飛ばしてでも逃げてよ…」
「…………だい…ぶ…です………あ……なた……に………い、されて……………から……………」
大丈夫です
俺は今あなたに愛されているから
死んだって後悔なんかしないです
けど、泣かせたくはない
「鈴山……」
「鈴山…」
「…っ……ん」
「目が覚めた?」
どうやら意識が飛んでいたらしい
体のあちこちを見るが怪我などは無いようだった
「殺さなかったんですね
俺のこと」
「お前は綺麗だから」
「何をしてもいいんですよ
最初に言いました」
どういう気持ちなのか自分でも分からない
ただ、もっと、純粋に、鈴白に触れるほどを心の底から求めていた
手を伸ばせば触れられる
でもそれでは足りない
もっと、もっと
求めてほしい触れてほしい
烏滸がましいことだとは思いながらも願うほどに望んだ
「ねぇ、本当に馬鹿だよね……鈴山
これでも僕だって本当は我慢しているんだよ?
甘くて綺麗で、そんなお前を我慢しているんだ」
「する必要はない」
「壊れてしまうよ」
「壊れたって構わない」
「壊すよ」
「それでいい
壊して」
壊れるほどに求めてほしい
それが俺の望み
応えて、求めて
「ねぇ、お前の血は髪よりも甘いのかな」
真っ白な彼は仰向けの俺に覆いかぶさるように
きつく俺を抱きしめて耳元でつぶやく
「食べてもいいよ」
彼からは
果物のような、木のような、空気のような、水のような
そんな香りがした
「いただきます」
かぷりと首筋を噛まれる
そこを何度も舐められて漸く歯を立てる
ぶつりと肉が噛み切られる程の力をゆるゆると掛けられて
「…っ」
「…いひゃい?」
「…んっ…ふぅ」
ギリギリ
ぶちん
たらりと血液が流れ出していくのが分かる
「…ん」
吸われ、舐められ
心臓が波打つ程の熱を持つ
体全体が毒に侵されるように熱くなる
「……はぁ…っん」
「…新鮮な果物よりもずっと甘い
鈴山………ねぇ…」
ヂュッ…
と音を立てて強く吸われる
耳にかかる息がくすぐったくて
声が蕩けそうで
「んっ…すず…し、ろっ……」
気持ちがよくて頭が溶ける全部を溶かされてどろどろにされる
「愛らしいねお前は…」
顔を上げてまじまじと目を見られる
息が上がってのぼせて涙目になって
そんな俺を愛おしそうに見つめている
「…っはぁ……きれい…すずしろ………ほしい…」
手を伸ばして求める姿は浅ましいだろうか
俺の血で紅を引いたように紅く色づいた鈴白の唇はより鈴白の白さを引き立てていた
「あぁ、村人達を愛しては居たけれどこんな気持ちは初めてだ…これも愛なのか……鈴山…」
「そう、俺を…愛して……俺と、一緒に居て…俺、鈴白になら殺されても何されてもいいから…っ
だから、ねぇお願い……鈴白と…鈴白と生きたい…」
「今度はおまえが泣くのか
その泣き顔、嫌いじゃない」
そう言いキスをされる
啄むようなキスを何度もされて深く、深く味わうようなキスをされた
鉄の味と涙の味がした
鈴白の舌は二つに裂けている
蛇のように
その舌で好き勝手に気持ちよくさせられて
意識がぼやける
「…っ…ず……しろ…ぉっ…あふ……んん………」
必死な俺と余裕の鈴白
神にも劣情は存在するらしい
もう随分と張り詰めたそこはしっかり自身を主張していて
その質量に目を背けたくなるほどだった
「ねぇ、こんなにしたのは…全部鈴山なんだよ?」
そこに手を持っていかれる
「…ふ…ぁ……すずしろ…?」
「……ここまで来て引くのは男じゃないよね?」
ニヤリと怪しく笑う
「………うん」
えらい
と頭を撫でられる
元々小柄で華奢な体つきのせいで子供扱いされることは多かったけど、鈴白の手は今までの手とは違う
「鈴山もそれ…辛いよね?」
「え?………あ…」
見れば恥ずかしくなるほどに自分のそれも張り詰めていた
「……じゃあ、兜合わせしてみる?
気持ちいいらしいよ」
「…なに?それ…怖い?」
「怖くないよ
2人で気持ちよくなれるんだよ」
「……やる」
鈴白になら何をされたっていい
2人で気持ちよくなれるなら尚更だ
向かい合う形で鈴白の膝に載せられる
何をするのか怖くて鈴白の首に腕を回してしがみついていた
鈴白はぽんぽんと優しく撫でてから
俺のズボンのチャックを開けた
そして何かと一緒に握られる
そこだけ熱くて仕方ないのに鈴白の手は少し冷たくて気持ちよかった
「大丈夫、一緒に気持ちよくなれるから
怖がらなくていい」
鈴白の白い手が2人のものを扱いているその光景があまりに倒錯的で頭の中がチカチカして眩んだ
「んっ、ぅ…っく……ん…ゃ、まっ…てぇ……ふぅっ…」
「っねぇ、鈴山…っ呼んで僕のこと…っ」
「…ぁ、ふ……ぅ…す、ず…しろぉっ…んっ……ぅあ…だ、だめっもう……っイ……ちゃっ…!!!」
「……っく」
動きがより早くなって
もはや焦点も定まらぬほどの快感に声を出すしかできず、二人同時に達っした
「…ね、鈴白…俺……誰かとこんなことするの…初めてだったんだ……気持ちよかった?
…鈴白」
「可愛かったな
初めて、か。
それは嬉しい」
「……全部初めて」
2人で寝転がる
軽くなった髪を鈴白が撫でる
「なぁ、鈴山
俺の依代にしても良いか
死ぬまでお前を愛しても良いか」
「…だから、言ったのに
何をしてもいいって。
俺、あなたに愛されるのなら死んだっていいよ」
「なら、死んでも愛そう。」
額にキスをして
手を繋いで寄り添った
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