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寿命二年
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がりり、と唇を噛まれる
傷口が熱くって
たらりと血が流れる
それを少し舐めて咲う
俺の血のついた唇は艶やか
べ、と出した舌にも在って
不摂生な俺の不味いそれを何度も何度も味わって居る
「お前を傷物にした俺は悪い奴だよ」
心底嬉しそうに咲ってまた噛み付く
今度は親指の付け根の肉を千切られる
ぶち
ぶち
と、肉と皮が引き裂ける音がやけに鮮明に耳に入る
傷口を執拗に舐め、吸い、愛おしそうに目を細める
俺の肉片を咀嚼し飲み込むと
「人の細胞は2年で全て入れ替わる
2年後の俺の身体は今飲み込んだお前で作られてるんだ」
ニヤリと顔を歪めてそう言う
俺はただ彼の一部になれることが嬉しくて緩んでしまう
「お前で浄化された俺は今までの汚れた俺ではなくなる
それでやっと死ぬことが出来る
これから毎日まいにちお前を食って
それでやっと俺は俺をおわらせることが出来る」
それは、違う
俺はそれほど綺麗ではない
深い闇に囚われてしまったただの人に過ぎない
俺は彼のそばを離れることは無い
きっと、2年後には俺の腕や足は血に塗れ
きっと骨が見えて居る
けど、それでいい
あなたの中で生き、そして死ぬ俺の細胞
俺はただそれだけで幸せなんだ
血液と甘い香りが辺りを漂う
「あなたが死ぬときには俺も連れて行って」
そう言うと
「お前は、そう望むのか」
「お願いします」
「2年後、同じ気持ちなら
連れて行ってやる」
そう言いくしゃりと髪を撫でられる
この猫のような人は
絶対に俺を連れて行ってはくれないのだろう
1人でどこか遠くで、1人寂しく死のうとしているのだろう
やるせない思いになって、彼を抱き締めて
声を殺して少し泣いた
彼はその間もずっと俺を撫でていた
あぁ、かなしや我が君
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