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報告.旧支配者(吸血種)について 内容:生き餌
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締め切った部屋のカーテンを開き窓を開ける
一瞬差し込んだ光に布団が
もぞ
と動く
「んぅ……だれ」
「古賀だよ」
「あぁ古賀ぁー」
布団からちらりと覗く腕は褐色で
たくさんの火傷のあとが目立つ
「空気の入れ替えくらいはしないとだめだろ
「だって俺カーテン開けれないもん」
「だから俺が来てるんだろ」
「んー、ありがとね」
皮膚が陽の光に触れると直ちに火傷のようになる
彼は幼なじみだった
そして旧世界の旧支配者
神に準ずる者の末裔だ
時代は変わり、世界は変わった
「なぁ、お前最近なんか食った?」
「んむぅ……
んー、最近?
えーっと、んー
あー、んー、わかんない」
「腹減った?」
「んぅ……たべない」
世界を飲み込むことすらできる
新世界は彼らを直近の条件を満たした個人に世話をさせることで利用することにした
世にいうモンスターや妖怪などといったものは全て実在し、旧支配者は末裔として血を薄めながらも存在している
「ダメだろ食べないと」
「……たべたくない」
「…………迎えが来るぞ」
「……やだ、こわい」
「なら」
「こ、古賀……やだ…………」
カーテンを全開にすると布団の中で身を固める
「……ご飯の時間だ」
「…いやだぁ」
えもいわれぬ快感なのだ
俺は今旧支配者の吸血種であるこいつを支配している
「悪い子だ」
「やっ、やぁ!!」
布団から無理やり腕を引っ張り出す
じゅぅ
と音がして
あいつが泣きながら嫌だ痛いと叫ぶ
可哀想で可哀想で可愛い
「ごはん、食べるか?」
「……ぅ、だめ?
…食べなきゃ……だめなの?」
嗚咽とともにくぐもった声が聞こえる
カーテンを閉めてベットに腰掛ける
大袈裟にびくつく体を布団の上から優しく撫でる
「ごめんな怖がらせて
痛かっただろ
もうカーテンは閉めたから傷を見せてごらん」
「本当に?
カーテン閉めた?
もう痛くない?」
「大丈夫だよ
ほら、俺はお前に嘘ついたことなんかないだろ?」
「……うん」
布団をめくると蹲っていた彼がちらりとこっちを見る
「手当してやるからな」
「ありがと」
絵本や小説に出てくる吸血鬼は金髪で赤い目で白い肌
なんとなくそんなイメージだった
だが彼はテンプレの化け物ではない
こぼれる涙を拭いながらも素直に腕を差し出す
彼は流れるように美しい白髪に褐色の肌目は緑
彼が処分されないように守らなくては行けない
俺だけが守れる
俺が守らなくちゃいけない
「よし、これでいいね
痛みは治まってきたか?」
「ん、痛くないよ
ありがと古賀」
涙の跡が残るその顔でふわりと笑う顔が何よりかわいい
「じゃあご飯の時間だよ」
「……なんで?
俺元気だよ…ご飯食べなくても元気だよ……」
「痛いの治らないぞ」
「古賀が痛いより俺が痛い方がいい」
「……お前がやらないなら俺は自分でやるぞ
無駄になるだけだ
どうする?
俺に自傷させるか?」
「…………わかった
……食べるから」
絶望のような顔をして項垂れる
よかった。
しっかり食事してくれるなら迎えは来ない
「ありがとう
いい子だ」
「痛くないように、するから……
痛くないように、ちゃんと……」
「大丈夫
ほら、おいで」
「……っいただきます」
ポロポロ泣きながら俺の肩口にキスするように唇をつけて噛み付く
がりがりごりごり
肉だけでなく骨も削れている
血は垂らした腕を伝ってぼたぼたと落ちていく
「……うん…いたくないよ………………大丈夫……」
「ふ……ぅ…………ごめ…ん……は…っ古賀ぁ……」
「上手……ん
ちゃんと………のみこんで、るな
えらい、ぞ…」
「……ごめん…おれ…………おいし…ぅ……」
一口齧ればもう我慢はできない
そう作られている
わかっている
そう。
全てはお前のために
「……大じょ…ぶ…………だ…い……じょぶ………なか……ない、で…」
激痛に気が遠くなる
泣き声が聞こえる
大丈夫
視界の端に火花が散ったように見えた
どうやら俺の体の再生も始まったらしい
「……こが…!
…ねぇ、古賀!!」
「………あぁ、おはよう」
「よ、よかった
古賀……おきた…」
ようやく覚醒した意識で記憶を呼び起こす
時計を見るとあれから数時間経ったようだ
こいつは俺が起きるまでずっと呼んでいたのか
「エーメリ……
大丈夫だよ
いつも言ってるだろ?
生失者の俺は身体の欠損くらいで死にゃしないよ」
「……でもいつも怖いんだよ
いつも…不安で仕方なくなるんだ……
古賀、お願いだからずっと生きてよ……」
「厳密に言うと生きてないよ」
「それでも、それでも一緒に居て……」
生失者は常に一定数存在する生きも死にもしない者で基本的に殺すことは出来ないが自殺は可能だ
どんな怪我をしても大抵は数分、骨折などの大怪我でも数時間あれば完治する
新世界の副産物だ
「…エーメリ
お前がそう言うなら俺はずっと一緒にいるよ
俺だけを食べて生きて」
「……うん」
暗くてもよく見える
綺麗な色
メロンソーダがぽろぽろ流れてる
あー、かわいい
俺はこんなに綺麗なものを独り占めしている
“処分”なんてさせない
“交代”なんてしない
俺でよかった
昼間の薄明かりが遮光カーテンに遮られている
血まみれの俺を抱き締めるのは旧支配者のエーメリ
決して俺以外にその体温を奪わせないで
俺のかわいいエーメリ
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