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恥の多い生涯を送ってきました
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この手紙がどのような形ででも君の手に渡ることを願っているよ
君は幼い頃からあらゆるものに秀でていて
周りは羨望と尊敬と嫉妬の目で君を見ていたよね
斯く言う私もその1人だった
でも君は諦めずに私に話しかけ、とうとう私は折れたんだ
……いや、折れたというのはおかしいか
私は嬉しかったんだよ
皆が憧れる君が私を追いかけてくれたことに
それはそれは図りきれないほどの優越と喜びだった
なぁ君も知っているだろ
私と君は二つに一つで
どちらかが欠けては生きられない
呪いのように強く、そして揺るがざる絆だ
君は間違いなく私の1番の知己であったし君にとっての私もそうだったのだろうと思う。
…あぁ、いや少し違うか
君と私は世界で1番分かりあった恋人であった
最も、この屋敷に預かられて十数年
君とは顔を合わせていないのだけれど
それでも分かる
私が生きる限り君も生き
私が死ねば君も死ぬ
我が片割れよ
私達は来世でもまた会えるのだろうか
今どこにいるかなど到底わかりはしないのだが
次、生を受けた時
君の隣には私がいることを願うよ。
加島 充三
曽祖父の見つけたのは数時間前で
僕の記憶の中に残っている祖父はもう少し堅い人だったから
きっとこの手紙の《君》は
曽祖父が唯一心を許した人なのだろうと思う
ふむ。元カノに宛てた手紙かぁ
「これ、どう思う?」
「ふーん」
しげしげと褪せた紙を見つめるのは幼なじみの倉田 洋輔(くらた ようすけ)
「へぇ、加島家三代目当主の加島 充三の宛名のない恋文かぁ
いいんじゃない
彼らは無事に会えたのかね。」
彼の家系、倉田家は昔から加島に仕えてた使用人の家柄だ
けど普通の使用人という言い方は少し違うかもしれない
倉田と加島は昔から深い絆の元に成り立っている
子供でも倉田は加島に使えなければいけないが
もし本人が嫌がり契約を破棄すれば自由の身
彼らは非常に変わっていて誰も彼も普通ではない
まぁ、魔法が常識となった今
普通も何も無いかもしれないが
お爺様についてる香琉(かる)さんは普段笑わないお爺様のためにいつだって曲芸をする
お茶を入れる時もそれは付き物だ
兄様についてる衛輔(もりすけ)さんは一言で言うと忍者だ
ふだんは容易に姿を表さないが兄の小さな声ひとつでいつでもすぐに現れるし
兄に迫る危険は速やかに片付ける
誰も皆家族や友人とは違う確固なる絆の元に仕えてる
給料だのではなく
加島だから仕え
倉田だから置く
加島の人間は必ず1人一生の片割れとなる倉田の人間がつく
それは強制ではない
自分の仕える主を倉田が見つけるからだ
そして僕に仕える洋輔は
「片割れ、か」
「うん
まるで僕らみたいだよね
僕は蛍(けい)のために生きるし蛍が死んだら死んじゃうと思うし
てか、蛍その《君》が誰で充三が誰かわかってる?」
「へ?
いやだなぁ洋輔
確かに本当に巡り会えていたら素敵だとは思うけど
そんなことはありえないだろ?」
「はぁ全く
俺の主はてんでダメだな」
「な、なんだって」
「香村 言葉(こうむら かたり)
この名前に聞き覚えは?」
「……こう、むら…??」
「この《君》だよ」
「……なんで、君が…名前を?」
「俺は前世の記憶を持っているのさ
もうお前と離れ離れにならないようにな
ようやく手紙を見つけたのに記憶が戻らないなんて……」
「かたり……かたり…香村 言葉
かたり?」
「今は洋輔だよ」
「かた…洋輔……なんで忘れていたんだろうな」
「お前あんな手紙書いていたんだな」
「仕方ないだろ。
寂しい時だったんだ」
「思いは俺も負けてねぇけど
ほら、記憶持ったままとか
すごいだろ」
「本当だな
思い出せてよかった
でも今は充三ではなく蛍としてお前を愛しているんだが」
「俺もだよ
初めてあった時から俺は今のお前を愛してる」
「待たせたな
洋輔、これからは想いを隠すことは無いんだ」
「本当にな
でも前世で離れ離れになってからを考えたら現世での時間なんて大したことないさ
この体が経験しているよりも長いあいだお前に焦がれ続けたんだからな」
「……これでようやく僕は僕になれる
ようやく半身をとりもどせた」
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