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ホームにて
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戦争が終わり、必要とされなくなった軍人はここに行き着く
退役してもすることなどない
はぁ、とため息を吐き出す
パイプから立ち上る紫煙が視界を濁す
珈琲を呑んでトーストを食べる
望んだ通りの午後だ
何をしよう
そうだ、ここのカフェで本を1冊読み終えたら向かいの角にあるパン屋に行こう
これも望みのひとつだった
街に戻って普通に過ごす
幸せを絵に書いたような普通を
幸せを
過ごす
あぁ、でもダメだなやっぱり
心の奥底がピクリともしない
そうだよな
本の文字が滲むのも
珈琲が苦いのも
トーストが味気ないのも
全て俺の望みではないからだ
いや、お前がいないからだ
俺の無くなった右腕でお前を抱きしめたい
鉛玉の埋まった足で体温を分け合いたい
日向でトランプをしようと言ったのはお前だったな
マジックを見てくれなんて言って
結局種を見破ることが出来なかった
気になって夜も眠れないよ
なぁ、俺が死んでりゃお前は生きてたんだ
あの時俺が死ねばお前は助かった
お前が俺の前に出た瞬間
体が動かなかった
結局俺はそうなんだ
なぁ、なぁ、頼むから
俺の命にもう一度色をつけてくれ
お前の肉体はお前の墓には無いしもうどこにもお前の声はない
思い出す度に胸が痛む
俺は罪悪感と自己嫌悪と焦燥とお前に恋い焦がれるこの感情に苦しみながらお前と過ごすはずだった日常を過ごす
どんな顔して会えばいいかわからないからまだ逝けない
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