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純潔 orange blossom
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オレンジの花言葉は純潔。
いかにもあいつにぴったりだ
自嘲気味に笑って目の前にある華やかな見た目のカクテルを一息に飲む
これはあいつと、その隣にいる愛らしい容姿の女性のためのカクテルだ
それを俺が口にしているなんて笑える
あー、くらくらするなー
あいつの顔も、よく見えない
あれ、俺泣いてるのかな
あー、長かった
俺の初恋は、本当に長かった
俺達が出会ったのは高校2年の春
クラス替えで同じクラスになった所からだ
あいつは人気者で周りにはいつもたくさんの人がいた
そんなやつの隣の席の俺はと言うと影が薄くていつも本ばかり呼んでいるような根暗。
あいつの席にはいつも人が居たから
俺は居ずらくて2年からは図書室に入り浸った
その日もいつものように図書室で文庫本を開いていた
「な、隣いいか」
「ひゃ……うん…」
あいつだった
俺の隣に座ってカバーのかかった本を読んでいた
「あ、それ」
「え?」
「それ俺も持ってる」
「本当?!
これ面白いよね!
えっと、僕この本のシリーズ全部持ってて、3作目の話がすごく好きで、人の気持ちをそれ以外の場面で描写するのがうまくて、あ!あとこの作者のサイン本持ってるんだ!何ヶ月か前に駅前のモールでサイン会やっててその時に僕たまたま通りかかって手に入ったんだ!すごい奇跡だと思って!!
って…………ごめん、僕またいっぱい喋っちゃった…うるさかったよね…」
「あ、いや待てもう少し話が聞きたいんだけど」
「え?」
あいつは良い奴だった
熱に染っていくのを感じながらこくりと一口飲み込む
俺とあいつは親友だった。
あぁ……親友だったんだよな
暗かった服装も髪も全部変えた
明るく清潔感溢れる誠実な雰囲気
これはそれから知り合った女に言われた言葉だ
暗いが、見た目が変わっただけでクールに変わった
昔手に入らなかったものが手に入るようになった
でも俺の欲しいものはいつまで経っても手に入らなかった
それどころか、今までずっと近くに居たのに
そいつは他のやつのものになってしまった
元から俺のではなかった
それは理解していたはずだった
でも出来ていなかったようだ
だって俺は今こんなに悲しい
「おい!
なんでお前がそんなに泣いてるんだよー!」
「っだって、お前が…………おめでとう
嫁さん幸せにしてやれよ…お前はいい男だよ
本当に、俺昔からよく知ってるからわかってる
嫁さんよりずっと前からお前と居るから」
なんだよ
一緒にいる期間なんかで張り合ったって無駄なのに
「……あぁ、俺がここまで頑張れたのだって
隣にお前がいたからってのも大きいよ
本当にありがとう。
お前は最高の親友だ
俺なんかよりずっといい男だよ
お前もさっさと結婚しろよ
お前の子供におじさんって呼ばれたいな」
「あぁ
おい、新郎が新婦ほったらかしてちゃだめだろ
戻ってやんなよ
俺なんかほっとけ高い酒なんてこういう時くらいしか飲めないんだから飲めるだけ飲んでやる」
「ははっ、珍しいな
今日は本当に祝ってくれてありがとう
じゃあな」
「おう、じゃあ」
あいつはあの人と一緒になって
昔よりも目が優しくなった
俺じゃなきゃわかんないぜ全く
……それくらいずっと見てたから
ずっと昔から見てたから
分かるんだよそれくらい
愛じゃ負ける気しないんだけどなぁー
…は、負け犬の遠吠えだな
今日は記憶がなくなるまで飲むんだ
明日二日酔いになったって構うか
俺は今日失恋したんだから
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