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俺はあいつを✕したい
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……。
「あれ?こんなとこにいるなんて変わってるなぁ」
「……。」
「んー?名前なんてーの」
「……」
「俺はねー、なつ!
唐野 夏(からの なつ)」
「………うるさい」
「…雪見?」
「…見るな」
「下の名前は?」
「……あっち行け」
「ははっ、なんだよそれ
もしかしてこれお前の学生証だったりする?」
「……返せ。
そして消えろ二度と来るな」
「ひでぇの!
えっと、雪見……んー、み、みこ?みれん?」
「チッ…」
「お、みれんであってるっぽい?
ふーん、未恋、可愛い名前だ!」
「………」
「ん?寝るのか?
俺と話そう!な?おい!」
「……」
「ふーん。
目閉じたまんまだと何されるかわかんないよ
キスとかしちゃうかも」
「……チッ
んだよお前
せっかく眠たかったのに」
「なんでこんなとこで寝んの?寒くね?」
「………寝ればわからないし、誰も来ない」
「あはー、確かに!
まぁ、俺来ちゃったけど!」
「……うざい」
「はは、仲良くなれそう!」
「……断言してやるよ
絶対なれない」
「いやぁ、にしてもここほんと寒いじゃん
俺眠くてもここは無理!!
一応室内だし鍵かかってるから誰も来ないけどさ、屋上の鉄扉の前で寝るなんてどんな丈夫な体してんの!」
「うるさい」
「ちょ、風吹いてね?
隙間風やば!」
「……暖かいとこ行きなよ
そしてその姿永遠に見せるな」
「ひっどー!
なぁ、明日も居る?ここに」
「お前が来ないことを願ってな」
「うっしゃ、じゃあまたねー!」
………。
「やふー!
よかったー、いなかったらどうしようかと思った!」
「……」
「何も食わねぇの?
今昼だけど」
「……」
「さっさと食ってさっさと帰れ」
「あ、分けてやろうか?
卵焼きは甘いのが好き?しょっぱいほうが好き?」
「………眠いからほっとけよ」
「つれないなぁ
ほら、あーん!」
「………チッ
…あま。」
「……お前、綺麗な顔してんだな」
「……?
意味わかんねぇ。
満足したならさっさと帰れ」
「いや、もうちょっといる!」
「……めんどくせぇ」
「ここ暗いからあんまわかんなかったけど
そんな顔してたんだなぁ」
「……」
「なぁ雪見…」
「……苗字で呼ぶな
好きじゃない」
「…未恋」
「…はぁ。」
「寒くね?俺まじで凍えそう」
「だから、早く帰れって言ってるだろ」
「やだ!だってまだ飯食い終わってないもん!」
「…」
「そんな顔すんなよ
食ったら行くから」
「そうかよ」
「明日も居る?」
「はぁ、悪いかよ」
「いーや!じゃあまたねー」
「……うるさい」
………?
「よかった
今日こそいないんじゃないかと思った」
「なんでお前の為に場所変えなきゃ行けないの」
「それもそうか」
「……」
「俺の名前覚えてる?」
「……忘れた」
「唐野 夏
俺も苗字で呼ばれるの嫌いなんだ
空っぽの夏だから」
「……そ。」
「嫌で嫌で嫌で
まず自分のことが嫌いになって
他のやつも嫌になった
俺馬鹿だから色んなこと考えられなくてさ
頭空っぽだから沢山詰め込んだんだ
そしたらぐちゃぐちゃになって
笑って、笑って笑って笑って笑って笑って笑って
気づいたら」
「……」
「殺した」
「……」
「好きだった子も、親も友達も先生も
嫌いになりたくないから殺した」
「……お前は俺をどうしたいの」
「…ははっ、俺の事名前で呼んで欲しいかも?」
「はぐらかすな」
「…………俺は、俺は未恋を…したい」
「……ここは寒いから」
「……」
「こうしたら暖かい」
「未恋……?」
「……」
「寝たのか……
未恋、どうしよう
殺したい……殺したくて仕方ないんだ
ごめん、頑張るから……死なないでね
ここにいてね」
荒廃した“学校”と呼ばれていた建物
もう3年も前から俺らの世界には気配だけ残して大半の生物は姿を消した
きっとあいつは終末の直前に壊れたのだろう
少なくないのだ
そういう人間は
この世界が壊れてから残された人類の約半数がこのようにおかしくなって消えていった
誰も彼もまるで別人のようになったが、見たところこいつもおそらくはそうだ
元は大人しく真面目な青年だったろう
神の不在は創造物を狂わせた
俺は世界を救うことは出来ないけど
お前を救うことくらいは出来そうだ
無気力で生きる気なんて全くなかったけど
俺も少し変わってしまったのかもしれない
俺はお前の神様になってあげるから
絶対に1人残したりしない
だって、俺は誰かを…お前を愛したい
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