アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
平氏討伐
-
手柄
兼平自刃。
兼光刑死。
巴、行方杳として知れず。
北陸宮はご出奔。
こんな終わり方でよかったのか。
あれだけの武人を、追い詰めて追い詰めて、犬のように狩った。
こちら六万であちら千人。
いや。
最期は二十騎もいなかっただろう。
兼光殿などは、投降したのに…
そう言うな義経。
戦も勝ち負けも時宜だ。
義仲は運が悪かったのだ。
私はあえて問う。
宣旨は、どのような内容でしたか。
範頼兄上はもちろん答えない。
されど私の手のひらに書く。
“この書状持つ者
吾が命にて源の将討つ役割なり”
やっぱりか。
あちらも源氏。
こちらも源氏。
どちらにも通用する文面ですね。
それが公家のやりかたってことだ。
私たちも今は官軍だが、あすはどうだかわからぬ。
滅多なことは言うものではない。
私はただただ外を見る。
範頼兄上は、中原親能殿とすり合わせる事柄があるとかで、
ではまた後日。
と私の居所を出て行った。
目を泣き腫らした吉次が、兄と入れ違いに入ってきた。
手には革袋を持っている。
吉次は黙って中身を手のひらに取り、私に示した。
はらはらと砂金がこぼれた。
これは?
義仲はんどす。
宿として借りた、良くしてもろた礼だと。
こんな義理堅い御仁を、大将が、大将が死なせはったんでっか?
吉次は号泣していた。
返す言葉がなかった。
戦とはそういうもの。
されど、それを吉次に言ってどうなる。
私は絞り出すように言う。
すまぬ。
吉次は首を横に振る。
ただただ横に振る。
ただただ吉次は首を横に振り、やはり出て行った。
褒賞
褒賞は特になかった。
どころか、
さっさと平家を消し去ってたも。
この一文に尽きたのだ。
とっとと行かぬと頼朝に言いつけるぞよ。
みたいな感じか?
結局後白河法皇は仕える人間など、誰でもよいのだ。
そして出張るのは私であり、範頼兄上であり、口を出すのは行家であり、梶原景時であり…
私は口だけではありませんぞ。
宇治川でも息子とともに先陣を争ったのじゃ。
若い者にはまだまだ負けぬ。
これが景時殿。
私は早くから義仲の限界に気づいておった。
だから転身できたのじゃ。
これが行家殿。
どちらも自分が自分がの、鼻高々の嘴挟み。
ああそういえば。
後白河法皇ご自身がそれであるではないか。
福原では、清盛の法要を営むそうだ。
その日は源氏は動かぬと言うておいたから、その日に攻めよ。
………。
これが殿上人中の殿上人、法皇様の言うことか。
下衆にすぎる。
それでも言うがまま攻めた。
法皇の仰せであるから。
私と兄上と安田義定殿。
気心が知れていて、かえって安心だった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
46 / 89