アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
二年(ふたとせ)③全完結
-
男(お)の子です!
でかした!!
赤子は文字通り真っ赤になって泣いておる。
姉娘は不思議な生き物でも見るように、母と赤子を見比べている。
かわいいであろう?
と問うと、
くしゃくしゃで、猿のよう。
見るのもいやだ。
と眉を顰める。
そんな娘が愛しくもあり滑稽でもある。
名は何とつけましょう。
産後の荒い息の中、郷が問う。
千年も万年も生きよと。
千歳丸、でどうか?
良いお名です。
一同が口々に褒めてくれ、その子は千歳丸と決まった。
この話はこれでしまいだ。
文治三年(1187年)十月二十九日に、秀衡様が病没され、跡目は泰衡殿が継いだ。
頼朝兄上と同じ、出自のいい弟だからだ。
国衡兄上は日がなこちらにいることが多くなり、泰衡兄は泰衡兄で、毎日のように寄り来る頼朝兄上の使者に、心穏やかならぬ日々を過ごされておられると聞いている。
万が一に備え、千歳丸は外へ出したが良いと、郎党らは繰り返し言うが、静の殺されたこどもの分まで、可愛がってやりたいとも思うのだ。
伊勢三郎は逝った。
佐藤兄も逝った。
佐藤弟は未だ行く方知れず。
ほかにも数知れぬたくさんの郎党に守られたこの命だが、生きる、生き続けることに梶を切ることは、彼らに対する裏切りにならぬのだろうか。
ほかの者はどうかわかりませぬが、
と弁慶が口を切った。
生きていてくださること自体が、私は嬉しうございますが?
私もです。
儂も。
俺もです。
我も我もと声が重なってゆく。
ああ。
私はここに在る。
ここに。
皆と在る。
完
追記
洛外に小綺麗な家がある。
女主が住んでいる。
器量良しとは言えないが、笑むと不思議な愛らしさが漂う。
男(お)の子が一人在り、母御に孝行しているという。
息子は関東におわす大将軍にも、その側近にも似てある。
密かに御落胤と呼ばれている…
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
74 / 89