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story5~黒木side~
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まだ気持ちは切り替えられていないものの、このまま何もせずにただ時間が過ぎるというのは嫌だと思い、美穂さんの手紙に書かれていた場所に向かった。
美穂さんの妹が居る。手紙にはそう書かれている。
住所を調べる事は簡単に出来た。
孤児院の中に図書室がありそこに小さなPCも置いてあるのでプリンターで地図を印刷することが出来た。
といっても図書室なんて名ばかりで、本なんて50冊もないし椅子も机も1つしかないのだが。
孤児院から少し進むとちらほらと住宅が見えてきて同級生くらいだと思われる年齢の子供がランドセルを背負って帰宅していた。
なるべく目立たないように顔を伏せ道の端を進んで行った。
「あの子見ない顔だね?」
「髪も長いし服も乱れてるけど大丈夫かな?」
そんな言葉が度々聞こえて「汚い」と言われているような気分になる。
いや、言われているんだろうけど。
そこから更に進むと人気が少しなくなる。
そこの狭くて暗い一本道を進めと地図は言っていた。
正直入りたくないような不気味な空気だが、意をけして足を踏み出した。
自分の足には少しきつくなって薄汚れたスニーカーの音と呼吸の音だけが聞こえて急に緊張した。
「ねェ。何してるノ?」
その時突如背後から声が投げかけられ、つい「ぅわ!?」と小さく声を出してしまった。
振り向いてみるとそこに居たのは1人の女の子だった。
艶やかなストレートロングの黒髪が良く栄える白い肌。
赤に近い濃いピンクの目は光の当たり具合によって色が変わっていて綺麗だ。
黒の無地ワンピースに白い白衣という不思議な格好をした彼女はこちらからの返答を待っていた。
「...誰」
「それハこっちのセリフなんだけド?アンタの目の前にある建物私の家だかラ」
彼女が指を指した先には小さな小屋がひとつ。一言で言うと「まじない屋」というイメージだ。
赤と紫と黒で統一されていて趣味は良いとは言えない。
しかしここが家と言っただろうか?
自分が用事がある場所もここだ。つまりなんだ。この彼女が美穂さんの妹だとでも言うのか。
あまりに似てなさすぎて信じられない。
確かに見た目は似ている部分はある。髪や顔立ちはそっくりだ。
だけども雰囲気が真逆だ。
「河合...美那さん」
勇気を出してそう言ってみた。
すると彼女は一瞬驚いたように目を開いたあと、意地悪そうに目を細めて微笑んだ。
「ふぅン?私の名前知ってるんダ。もしかしテ君が姉さんの言ってタ渚くん?」
「そうだけど...」
「思ってたより子供だネェ?私と同じくらい?少し下カ」
そう。これが美那との出会いだった。
第一印象は「怖い」「不思議」「個性的」「美人」だった。
言われるがままに中に入ったが、外見を裏切らず中はごちゃっとしていて俺にはガラクタにしか見えない。
けれども彼女の目には違く映っているのかも知れない。
「まあソの辺に座っててヨ。特製ドリンクしか無いけドごめんネ」
そう言って差し出されたものは飲むのに抵抗があるような色をしている。
でもそれを見た時不意に美穂さんが作ってくれたクッキーの事が浮かんで思わず笑いが零れそうになる。
一口だけ飲んでみようかと少量口に流してみたが、味の感想はと聞かれると答えられない。
フルーツと薬が合わさったような味とでも言っておこう。
「さっきハいきなりごめんネ。不審者かと思ったから強く当たっちゃっテ」
「別にいい」
「そ?じゃアまず自己紹介でもしとこうかナ。私は河合美那。君の知ってる美穂の妹」
「黒木渚」
やはり妹だった。
確かに手紙に「ちょっと不思議ちゃん」と書いてあったがこれはちょっとどころの話なのか。
「君って口数少ないんだネ?喋りにくいナァ...」
「.........」
「だんまりカ。年はいくつなノ?」
「7つ」
「じゃあ私の2つ下だネ。宜しく渚」
河合美那と名乗った少女は笑顔で手を差し出してくる。
いきなりの呼び捨てにおどつきながらも弱々しく握り返した。
2つ上ということもあり身長は多分10cmほど違った。もともと俺が小さいのもあるけれど。
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