アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
story28
-
「えっと、今日僕図書館で勉強しててね?その帰り道でコーちゃんと黒木先生が一緒にいるのを見かけたの...ごめん」
今にも消えてしまいそうな声で瑞稀は話すものだから、何も言えなくなってしまった。
「見るつもりはなかったんだけど!たまたま見ちゃって、えっと、それで...黙ってるのも悪いかなって思ったんだ。ごめんね」
『いや別に、瑞稀が謝ることじゃねぇだろ』
「でも、見られたくなかったと思うし...」
『ちょっと待て、瑞稀は誤解してる』
「誤解?」と震えた声で瑞稀は言う。俺が怒っていると思っているのだろうか。
そんな瑞稀を怖がらせないよう、精一杯優しい声で、ゆっくり、ゆっくり話した。
『だから...俺と黒木は付き合ってるとか、好き同士だとかそういうのじゃない。ただの教師と生徒』
「えっ?でもキスは、どうゆうこと?」
『あれは...その、あいつがたまにふざけてしてくるっつーか?俺は嫌がってるし...』
「そ、そうなの?じゃあ黒木先生が男の人を好きだってこと?あれ?」
混乱してんな。
別に言ってもいいよな?黒木には散々好き勝手されてんだから、俺も少しくらい。
『...前に言ってたのは、男も女もイケるっつってた。今は知らねぇけど多分そうなんじゃねぇの?』
「そうゆうことかぁ、なるほど、ありがとうコーちゃん」
『どういたしまして。それより瑞稀、話ってこれだけか?』
「あーうん!これだけ〜。スッキリしたよ!」
『そうか。でも案外驚かねぇんだな。黒木がホモだって』
「えっ!?あ、うん!そうだね!驚いたよ〜ははっ」
なんなんだ?明らかにテンパっている。
瑞稀は柔軟なタイプだし、そうゆう奴も引かないで受け入れるかもしれないが...。
どうした?と聞こうとすると、瑞稀がテンパったまま
「あっ、じゃ、じゃあきるね!おやすみコーちゃん!」
と言って電話を切ってしまった。
『...なんなんだ』
ツーツー♪と鳴っているスマホをじっと見る。
いいや、考えるのがめんどくさい。結果何事もなかったのだからいいじゃないか。
きっとこの先俺と瑞稀が気まづくならないように気を使って電話を掛けてくれたんだろう。
瑞稀なりの優しさだ。
俺も言ってくれてありがたいし、うん、これ以上はもう考えなくていいだろう。
__トントンっ
部屋のドアがノックされ、「失礼します」と河合が入って来た。
ああ、そういえばもう夕飯の時間だった。
うちでは時間になったら自分でダイニングに集まるとクソ親父が勝手に決めていたのだった。
すっかり忘れていた。
またクソ親父に愚痴られるのか、はぁ。
「コウ様。お夕食の準備が出来ておりますが...」
『ああ、忘れてた。今行く』
「はい。お待ちしております。あ、コウ様」
『なんだよ。今行くって』
俺が不機嫌そうな顔をしたのに河合は微塵も動じずひとつの封筒を俺に差し出して来た。
茶色の、柄が一切ないごく普通の封筒。
『なんだよこれ?』
「千華様が本日から海外で仕事をなさるので、代わりにコウ様に渡すよう頼まれました」
『あいつが...』
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
37 / 53