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story43
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『いや、俺もまだ寝れねぇから...えっと...』
「...隣、いる?」
『っ、あ、ああ』
うそ、本当は少し眠たかった。
けれど、まだ誰かと一緒にいたかった。こんな夜を誰かと過ごすなんて久々だったから。
もしかしたら少しだけ人肌が恋しかったのかもしれない。
ソファに近づき、黒木から少し間をあけて座る。なぜだか妙に緊張した。
「ふふっ」
『な、なんだよ』
「いいや、ひとりで寝るのが寂しいなんて可愛いなぁって」
『なっ、誰もそんなこと言ってねぇだろうが!』
「言わなくても顔に書いてあるし、なんとなく分かるよ」
『くっ...!』
その顔。ムカつく。自分は全部分かってるみたいなそんな顔。
「...ねぇ、珂神」
不意に黒木がそう言った。とても細く小さな声で。
俺は先程までとは空気が違うことが分かり同じようなテンションで『なんだよ』と言った。
すると、黒木はゆっくり、ゆっくりとこう言ったのだった。
「俺と珂神ってさぁ、本当に似てるよな」
『はぁ...』
確か前にも黒木はこんなことを言っていた。俺は似てるところなんて全然思い当たらないけど...。
「兄弟なんじゃない?ってレベルで似てるよねぇ」
『え、いや。さすがにそこまでは...』
兄弟って...似ていたとしてもそこまではないだろう。
性格だって、見た目だって、言動だって、全然違うじゃないか。
黒木はさっきから様子がおかしい。
何かあったのかもしれない。けど
__俺が聞いていいことだろうか...。
『黒...木?』
「...いや、変な事言ったね。ごめん。俺もシャワー浴びてこようかな」
『えっ、あ、うん』
「先にベッドで寝ててもいいからな。もう遅いし。明日学校あるから」
『分かった』
黒木は少し微笑むと、すたすたとシャワーに向かった。
誰もいなくなったリビングは何だか少し寂しく思えた。
『あ......』
黒木が机の上に広げていた仕事をちらっと見ると、それはこの間のうちのクラスの数学レポートだった。
丁寧に丸がつけられていて、一人一人に一言ずつメッセージが書かれていた。
それを見ただけで、教師の仕事を大切に思っていることが伝わってくる。
そういえば、俺はこのレポート提出してないな...。うん、考えるのをやめよう。
黒木が言っていたとおり、明日は一応学校があるし、早く寝ることにしよう。
瑞稀に心配はかけたくない。
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