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4話(3/5)
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グイグイと強引に腕を引きながら廊下を歩くその姿は何だか競歩のレースに出ているようで、前を歩く流の表情は見えないが機嫌が悪い事は確かだ。
離し掛けるべきか迷ったが、このまま校内をウロウロしてても疲れるだけ。
「おーい、どこまで行くんだよ」
「…………」
「耳ねーのかよ」
皮肉を交えて呟くと、ようやく流の足がピタリと止まり、投げ捨てるように腕を離した。
物じゃない、と文句を言いたかったが物凄い形相で睨まれ何も言えなくなる。
「な、なに……?」
「別に」
何でもない、と言うがとてもそうは見えない。
言いたい事があるならハッキリ言えばいいのに。
そういえば、と千尋はまだお礼をいっていなかった事を思い出す。
「さっき、ありがとうな」
「なにが」
「いや、白谷……だっけ?お前、オレのこと助けてくれたんだろ?」
もしあの時流がいなければ白谷を振り切ることは出来なかった。
それに遠回しな言い方だったが担任が来たことも教えてくれた。
……結局注意を受けてしまった訳だが。
「お前、案外いい奴なんだな」
「なっ!!」
ニカリと笑って言うと、流の顔がゆで蛸のように真っ赤になる。
耳までも真っ赤だ。
その反応に千尋も戸惑ってしまった。
(もしかして……)
「照れてんの?」
「んなワケあるか!」
「でも顔真っ赤だけど」
「う、うるせー!こ、これは蕁麻疹だ!!」
「……あー、そう」
それは絶対蕁麻疹なんかじゃない。
と、心の中で突込み、思わず笑ってしまった。
「なに笑ってんだよ」
「いや、別に……クッ……ゴメン、ちょっとツボに入った」
(そっか、コイツ素直じゃないだけなんだ)
ただ、それだけ。
それなら今までのことも全部訳が分かる。
本当は優しい奴なんだ。
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