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9話 1
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「やっぱりお前馬鹿だな」
「うー……そんなの分かってんだよ。でも知らなかったんだからしょうがないだろう」
悔しくて箸を噛むと行儀が悪いと流に指摘される。
(それをお前が言うか!?)
言葉にはせずキッと睨んでみるが鼻で笑って返される。
それがまた悔しくて、でも自分が馬鹿なのは百も承知なので結局何も言い返せない。
「だって慶一さんってなんかよく分かんねーんだもん」
昨日の事を流に話した。
きっと馬鹿だと言われるだろうと思っていたが予想通りに言われてしまったが。
「つーかさ」
「なに?」
「お前って慶一さんの従弟なんだろ?それぐらい知らなかったのかよ」
流の疑いの眼差しが向けられる。
そう。
流や奏には自分は慶一の従弟、という設定なのだ。
まさか病気で治療の為に家や学校も援助を受けている、しかもそれが血縁関係の全く無い赤の他人なら色々と怪しまれるだろう。
(よくよく考えたら凄い話だよな)
いくら祖父と同じ奇病だからとはいえ赤の他人にここまでしてくれるなんて。
きっと慶一は自分に見返りなんて期待も願ってもいないだろう。
恩返しを考えても相手は生粋のお坊ちゃま、欲しいものは自分で手に入れられてしまうに違いない。
そう考えると申し訳なさや自分の力の無さに胸が締め付けれるように痛んだ。
「おーい、聞いてんのか」
「……あ、あぁ悪い。えっと、従弟っても殆ど会った事無かったからさ、あんまり知らなかったんだよ、うん!」
「ふー……ん」
それで納得したのかは分からないが流はそれ以上追求はしてこなかった。
(悪い、流)
騙しているようで心苦しいが仕方ない。
いつか真実を話せたらいいのだけれど、と思う。
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