アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
8話(3/4)
-
「ふ……あ、ぁ」
顎が外れるんじゃないかと思うぐらい口を開けて欠伸を一つ。
隣の席から「ひでぇ顔」と罵られるが女子がいないのだから変にカッコ付けたって何の得も得られないじゃないか。
「流は眠たくねーの?オレなんか今寝ていいって言われたら即効で寝られる自信あるんだけど」
「全然。部屋戻ってすぐ寝たし……お前なんかしてたのか」
「あー……なんかしてたって言うか寝られなかったっていうか」
「ハァ?」
意味が分からないと険しくなる視線に言葉が詰まる。
(オレだってすぐに寝たかったんだよ)
昨夜慶一に言われた事を考えていて中々寝付けなかった、それは事実だ。
頼りにしろと言う事は分かる。
そもそも千尋が今こうして学校に通えているのは治療の為だ。
学費も生活費も殆ど慶一に援助してもらっている。
何から何まで世話になりっぱなしの状態で感謝の気持ちでいっぱいだ。
それで発作になったら頼れと言われたが正直な所これ以上頼るというのは気が引ける。
こう考える事が立場上そもそも間違っているのかもしれいないけれど。
(ま、慶一さんと一緒にいられる時間なんて限られてるし難しいよな)
いざ発作になった時、仕事をしている慶一が駆けつけられる訳が無い。
慶一が仕事が休み以外で顔を合わせる機会は朝食時と夕食時、それから寝るまでの僅かな時間程度だ。
しかもそれだって慶一が仕事で家を空けていたら無理なのだ。
結局の所、頼りたくても頼れないのが現状である。
「ま、どうにかなるだろ」
今までも自分でどうにかしてきたんだから。
「なんか言ったか?」
「べっつにー。てかマジで眠い」
千尋が再び欠伸をすると流も釣られて欠伸をしていた。
お前だって眠いんじゃん、とからかおうかと思ったが担任が入ってきたので止めた。
簡単な連等事項をつらつらと語るので、それがまた眠気を誘う。
「そうそう、一時間目の授業は急遽変更になったからな」
担任のその発言にクラスがザワつく。
一時間目は数学だったからだろう。
それさえも興味の無い千尋がまた欠伸をしようとすれば、担任と入れ替わりに白衣を羽織ったダークブラウン髪の男が教室に入ってきた。
その男の顔を見て千尋は欠伸が引っ込み漫画を読もうとしていた流でさえ目を見開いた。
「皆さん初めまして。今日から養護兼保健の授業を受け持つ事になりました叶慶一です」
柔らかな笑みを浮かべた慶一はそのまま真っ直ぐ千尋に視線を向けて、
「何かあったら遠慮なく頼って下さいね」
と、一言。
その言葉の裏を知る千尋は欠伸所か眠気さえ吹っ飛んでしまっていた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
38 / 47