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ゴースト・・・・終
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柔らかい物腰に反して、男のセックスは攻め一辺倒で、多少サディスティックだった。
相手がそうなら、志水もそっちを楽しむ。
深く男に貫かれながら首を絞められ、失神寸前で解放され射精した。
男の加減は絶妙で、志水はすっかり自分の体を預け渡した。
お互い汗まみれで、シーツに崩れ落ちた。
志水の身体の中にまだ男がいたが、二人とも尽き果てて、心地よく落ちかけている。
後ろから志水を抱いたまま、息を切らして男が囁いた。
「……すごくよかった……」
「……うん……」
志水もなんとなく頷いたが、もう半分眠りの中にいた。男は名残惜しそうに志水の背中や顔にキスを落とす。
左頬に男の手が添えられ、いたわるように優しくそこを撫でた。
「これ、誰に?」
志水は目を閉じて、少し笑っただけだった。
「……眠ってもいい?……」
「うん、眠りな……ゆっくり寝ていっていいよ……」
「仕事は……?」
男が答える前に、すうすう……と軽い寝息が聞こえた。
ようやく男は志水の身体から抜け出ると、その安らかな寝息を大切に抱きしめて、背中がかすかに上下するのに導かれるように眠りに落ちていった。
◆
起きた時には10時を回っていて、男はコーヒーを入れ、身支度を整え仕事に出かけようとしていた。
まだ寝てていいと言われたが、志水も一緒に出ると言ってよろよろとベッドから這い出ると、シャワーを使った。
部屋を出る前に、男は今更だけどと言いながら名刺を渡し、志水はそれを受け取ったが、特に確かめもせずポケットに入れた。当然男は言う。遠慮がちにだが
「……なまえ、おしえてくれる?」
ちょっと考えて「シミズ」とそっけなく答えた。
苦笑いしながら男はもう一度とねだるように唇を寄せた。志水はそれもそっけなく受け止めた。
「また、会える?」
「……次は金とるよ」
「え?」
男が目を丸くする。
「ご、ごめん。プロだったの?」
焦る男の顔を見て志水は笑った。
「ウソだよ」
「え?」
昼間はきついと言って、志水はタクシーを呼んだ。
外に出ると視界が白く飛ぶほどの強い日差しだった。
志水がかざした手で目を覆う。
その姿が風景に透けて見えて、男は目を細めた。
少しは期待したのだが、結局志水から男に連絡が来ることはなかった。
男の方は、それからもあの店を訪れているが、志水とは会えなかった。
バーテンダーに聞くのも、何か勘ぐられそうで志水に悪い気がした。
が、ある夜、店のトイレに立った時、ふと視線を感じて顔をあげると、貼られていた一枚のポスターと目が合った。間接照明の仄暗い灯りに浮かび上がる白い顔。
それはたぶんずっと前からそこに貼ってあったものだったが……。
「……あ!」
紗のかかったモノクロームのビジュアル。中央にたたずむ黒いシャツの青年……。
それは何年か前の演劇公演のポスターだった。
「ああ、そうですよ。志水さん。舞台俳優さんで。あの公演の時、稽古場が近くてよく俳優さんやスタッフさんが寄ってくださってたんです」
そう言って、バーテンダーがカウンターの奥から薄い冊子を取り出した。
「僕もご招待いただいて、みてきたんです。志水さんこの時まだ19歳とかで。これが初舞台だと言われてましたよ」
それは公演プログラムで、中には確かに志水がいた。
『志水 暢彦』
19歳の彼が、なぜだかとても懐かしい。
男は込み上げる笑いを酒に流した。
ゴースト・・・・終
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