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プレイルーム
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・・・・1
最近頭の中が、少々、無理矢理に分裂気味だ。
必要にかられて英語を喋るオレは、まるで無理矢理に引き裂かれた人格のようでもあり、じゃあ、本来の言語でいったいオレがなにを喋るのかというと、これまた芝居がかった、どうにも不自然な言葉ばかりで、すっかり自分がどんなヤツだったかを忘れてしまいそうな毎日なのだ。
サンフランシスコのカストロの、オレが借りるには少々分不相応なこの高級アパートは、建前だけの若社長である、オレの恋人の持ち家だった。
こっちで仕事をするときは居候させてもらっている。
そう、はたからみれば立場は居候だ。しかし、実はこの部屋の主人はオレだ。
同居しているのは、かわいいペット。
下衆な言い方をすれば、M奴隷。
オレはこいつを「守谷サン」と呼んでいるんだけどね。
まったく、このかわいい守谷サンときたら、呆れる程にど淫乱で、悲しい程に頭が悪く、せつないくらいに純粋で、殺したい程愛らしい。
四六時中手元に置いておくには、あまりにも手がかかるし、あまりにも凶暴。
下手をすると、すべての感情を守谷さんに支配されそうになる。
独占欲と嫉妬と憎悪に押しつぶされそうになる。
だから東京にいる親友と、共有することでなんとか折り合いをつけた。
自分自身との折り合いだ。
とりあえず、オレのすべての半分は守谷さんに捧げよう。
でも残り半分は、なんとか保て!オレを保て!
「……うう……う……」
虫の羽音のような微かなうめき声は、さっきから時々オレの耳をくすぐっていた。
でも、オレは聞こえない振りをする。
明日までに、提出の論文を仕上げたいのだ。
ともすれば、そのうめき声に引き摺られ、分裂してしまいそうになる自分の脳内を必死で保って、集中している。しかも英語の思考回路で。
保て!邪魔をされるわけにはいかない。
「……う……・」
うめき声は、ふっと力なく途切れ、何度めかの静寂が降りた。
オレは慎重に、集中力を欠かないように、頭を肩越し左に少しだけ動かし、背後を確認する。
部屋の中央の大きな柱に取り付けられた金具に首輪から伸びた鎖と、両手首の手枷を繋ぐ鎖を固定された白い生き物が、膝立ちのまま、クタリと頭を垂れ、涎を垂らしている。
失神したらしい。
失神しても膝立ちなのは、鎖がそこまでの長さしかかない為だ。
意識を失っても、崩れ落ちる事さえ出来ない。
短く刈り込まれた柔らかな髪は、真夏のビーチではしゃいだように、汗でじっとりと湿り額に張り付いていた。
ほんとうなら、俯いた真っすぐな美しい額の陰に伏せた長い睫毛が見えるのだが、それは革の目隠しでおおわれていて、セシュターを噛まされた口からは、だらだらと、大量の涎が滴っている。
両乳首には、クリップがするどく食い込み、痛々しく引き延ばされた先に、オレの怒りの分だけの分銅が下げられていて、その痛みだけでも相当だと思うが、すでに麻痺して感覚はないのかもしれない。
意識を飛ばしたのは、たぶん乳首の痛みのせいじゃない。
だって彼のカラダは、もっと大きな苦痛に耐えている。
例えば、アナルに食い込んだ極太のプラグは、直径が6センチ。
夕べのしつこいアナルセックスで、内部がかなり敏感になっているようだから、あの重たいゴムの塊がねじ込まれた状態じゃあ、火傷の傷が引き攣れるように痛いだろうね。
睾丸はリングで締め上げられ、ぱんぱんに腫れ上がっている。カルナで吊られたコックの先のかわいい小さな口にはぶっすりとカテーテルが突き刺さっていて、まるで、重病人のように導尿されている。
無抵抗なままに、排泄行為を促されているのだ。ああ、哀れだ。かわいそうに。
もう半日もその姿勢を強いられたカラダは、汗びっしょりで疲れ果てている。意識を失う事が、せめてもの休息なのだった。
ほんの少しだけ、優しい気持ちがオレの眼差しを和らがせた。
彼がいったい何をして、オレを怒らせたのか、怒りをかったのか。
彼にはまったく自覚はないだろう。実のところはオレにも覚えが無い。
何もないのに、こうして彼は毎日毎日、オレの指先の動き一つに怯えている。
オレは彼の瞬き一つを理由に、瞬時に怒りをみなぎらせる。
悪趣味なゲームでもあるが、もはやオレと守谷さんにはこの関係性が必然なのだ。
生まれながらにして、トップとボトム。
生まれながらにして、スレーヴとマスター。
平たく言えば、オレは根っからのサディストで、彼は根っからのマゾヒスト。
いや、根っからだったか?
もしかしたら、目覚めさせたのはオレたちかもしれない。
だって、彼、相当にタチの悪い、王様のようなヤツだったじゃないか。暴君だ。
跪けと足蹴にされていたのはむしろオレたち?
まあ、SでもMでも、どうでもいいんだけど。
この遊びを仕掛けたのはオレと親友だったけど、のってしまったのは守谷さんだ。
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