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ランチタイムラヴァーズ
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ラインの通知。
『チェックインしました♡』
少し前から落ち着かなかった。高埜はPCを閉じると、フライング気味に昼休みを申告し、デスクを後にした。
経営企画室の室長、38歳、独身、180センチを越す長身、愛用の香りはサンローランのオム。中学生の姪っ子からはイケメン認定をもらっている。
高埜はスペックとしては、わりと全てを備えた男と言えるだろう。
それだけに、選り好みが過ぎて独身なのではと(余計な)心配をされるが、選り好みも何も、恋愛対象が男なので、結婚という制度にそもそも縁がないだけだった。
会社前からタクシーに乗る。
「日空ホテルお願いします」
行き先を告げてラインに返信する。
『ランチタイム入ったよ』
すぐに返信が入る。
『お腹すいた♡』
10分弱で到着し、指定された部屋に急ぐ。
ドアを開けたのは、高埜と同じくらい長身のバスローブ姿の男。
後ろ手にドアを閉めると、高埜はすぐに男を抱き寄せる。
「シャワー使ったんだ」
「ん……」
唇を合わせ、ねっとりと舌を絡ませながら、高埜は男のバスローブを脱がせ、ダブルベッドに押し倒す。
「あ、んん……タカノさんはやく……」
口腔を貪り合いながら、裸の男がじれったそうに高埜のスーツを脱がせていく。
「マユミ……」
◆
檀は高埜の会社の営業部にいる。営業マンとしてはそれなりの成績を上げてはいるが、プライベート優先を人生の方針としているだけあって、仕事は定時、出世欲もないが社内のしがらみにもここまで無縁。
高埜からすると、歳もかなり下だし社内ではほぼ接点もなく、かろうじて同社勤務の社員として認識している程度だった。それがこうして、平日の勤務中にも関わらず、ホテルのデイユースを利用して求め合う関係になったのは、檀が登録していたゲイアプリを高埜も利用していたからだった。
出会いを求めていたわけではなかったが、なんとなく眺めていたゲイ専用マッチングアプリ登録者の中でも、一際目を引くルックス。。
MAYUMI 30歳、180cm・68kg・16cm、募集目的「セックス」を意味するアイコン。
……これ、確か営業部の……。
気づいてから、会社でもかなり意識したが、外回り中心の檀を社内で見かけることはない。
だからその日、会社のカフェテリアで一人でいる檀を見つけた時は、まるで運命の恋人と出会えたような気さえした。
これは幸運なのか、不運なのか。
まずはアプリで建前無しにアプローチすべきだったか、リアルな場所でのこの偶然の出会いに賭けるべきか。
もちろん会社では、自分のセクシュアリティは明かしていないし、気取られないようにしてきた。檀にしたって同じだろう。それなのに、声をかけるなんてこと……迷惑ではないのか……。
だがその日、外は雨で、カフェテリアの大きな窓に水滴が流れるのを、物憂げに眺めている横顔がたまらなく「エロ」くて……。
『ここ、座ってもいい?』
檀は檀でどストライクの先輩社員に突然声をかけられ、どうぞと席をすすめながら、絶対落とすと狙いを定めた。
お互いがそういう目で見つめあっていたわけだから、その日のうちに連れ立って飲みに行き、日付が変わる前にホテルになだれ込んだ。
酒も会話もセックスも、最高に相性が良かった。
身近でそんな相手と巡り合えるなんて、奇跡に等しい。
出会いは時の運だというけれど……。
後ろから抱きしめた檀の体の中で、余韻に浸りながら高埜は思い出し笑いをする。
「マユミのこと、ほんとは知ってたんだ」
「え?そうなんですか?いつから?」
「ん……wonderで見た……」
「え……ああー……」
思い当たった檀は、くすりと笑った。
「なんだ、タカノさんも登録してたんだ」
「メッセージする勇気なかったけど」
「なーんだ、同じ会社で出会うなんて、運命の恋かと思っちゃった」
「……え……」
「そんな夢みたいな出会いってないですよねえ」
胸がぎゅっと締め付けられた気がした。高埜は慌てて檀の眼を真剣に見つめる。
「檀、違うんだ!俺も、運命だと思ったんだ」
「ええ?あはは、いいですよそんな」
「本当だよ。昼間カフェで君を見てさ、いや、アプリで君の写真を見たときにだよ。一目惚れだ。ほんとだよ」
必死な高埜の顔を檀は大きな目でじっと見ていた。
「タカノさんかわいい……」
檀が高埜の唇を求めてきた。それに応えながら高埜が言う。
「マユミ……好きだよ。本気になっていいよね?」
「ん……俺も……好き……」
深く舌を絡ませる。檀の中、高埜がまた硬さを増し、腰をうごめかす。
「ああっ……あんっ…んっんっ」
いったん檀の体内から抜け出し、すで精液のたまっていたコンドームを外して投げ捨てると、生身のまま、また檀の中に自分を埋める。
「マユミ……マユミ……」
檀の中を突き上げながら、高埜は本当に檀を愛してしまいそうだった。
こんなふうに愛を感じるセックスなんて、いつぶりだろう。
射精感と一緒に確信めいたものが込み上げてくる。
はじけると同時に思い至った。
全てを捨てて、檀を愛したい!
檀と新しい人生を歩むのもいいじゃないか。
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