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想い 1
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「ごめん、責めてる訳じゃないんだ。」
「うん…ごめんなさい。」
正兄ちゃんの申しわけなさそうな声に僕は更に手に力が入る。
「雫。」
正兄ちゃんの優しい声に、ゆっくりと顔を上げると正兄ちゃんは自分の座るソファーをポンポンと叩く。
おいで。と言われたようで僕はラグから立ち上がり正兄ちゃんの隣へ座る。
「謝るのは俺なんだ…愛美の気持ちにきちんと応えてあげられなかった事が雫に辛い思いをさせてしまっ…」
「違うよ!…違う、僕がいけなかったんだ!!ぼく、僕が…」
僕が正兄ちゃんを好きになってしまったのが、いけなかったんだ。僕が正兄ちゃんを兄弟として好きだったら、愛美さんが嫌な思いをする事も正兄ちゃんに謝らせる様な事もなかった。
律兄ちゃんが家を出たのかは分からないけど、正兄ちゃんがいて律兄ちゃんがいて愛美さんがいて、僕達は家族として仲良く暮らしていたはずなんだ。
でも、僕は、好きになってしまった。
けして、好きになっちゃいけない人を
愛してしまったんだ。
やっぱり、僕はここに居ちゃいけない。
僕が居る事で正兄ちゃんと愛美さんが不幸になる。
律兄ちゃんと彼女の邪魔にもなってしまう。
居ちゃいけないのに、どうすればいいのか、悔しさなのか、居場所が無くなる事への不安なのか、沢山の感情が僕の中で渦を巻くように溢れて視界がぼやける。
「俺はずっと自分の気持ちを偽ってきたんだ…そうしないと大切な物が俺から無くなってしまうと思ったから。怖かったんだ。」
正兄ちゃんがゆっくりと紡ぐ言葉に、僕はぼやけた視界で顔を上げ正兄ちゃんを捉える。
「怖い?」
「そう…だから、俺は逃げた。自分の気持ちを偽って、誤魔化して、愛美に逃げたんだ。」
正兄ちゃんが何を言ってるのか僕には、さっぱり分からなかった。分からなかったけど、正兄ちゃんの凛とした声から最後まで、ちゃんと聞かないといけない事だけはわかった。
「でも、そんな俺の弱い心のせいで愛美だけでなく雫にも辛い思いをさせてしまった。だから…俺は、もう逃げない。」
正兄ちゃんの両手がゆっくりと上がり、僕の頬を包む。
正兄ちゃんの手は僅かに震えていて、親指で僕の瞳に溜まった涙を拭うと、真剣な表情の正兄ちゃんと視線が合わさった。
「雫。俺は、雫を愛してる。」
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