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「司…綺麗だよ。見て」
「ん?」
僕の言葉と共に司は後ろを振り向き
その夕日を眺めながら僕を真っ直ぐに立たせ、
2人でその夕日が沈むまで静かに見ていた。
そして夕日が完全になくなりかけた時
僕と司は近くにあったベンチに座った。
「司…僕ね、お母さんとお父さんと僕での3人での思い出の記憶が全くないんだ。」
「…。」
「今日ここに来たかったのは、なんとなくここの写真を見た時に3人で来たような気がして…それで、司にも一緒に来てもらいたかった。」
「そうか。」
「記憶はやっぱり思い出せなかったけど、それでもっ…今日は司と僕との思い出が1つ増えたからよかったよ!」
「俺も…お前のおかげで、今日は久々に良いものが見れた。ありがとな。」
「僕こそ連れて来てくれてありがとう」
「ああ、じゃあそろそろ家戻るぞ。」
「うん…。」
もう少しここにいたかったけど
今日はずっとここにいてもらったし
時間も時間だから帰らないとな…
やっぱり思い出せないで終わっちゃったか…
「また連れて来てやる。」
「え…?」
「次来たら思い出せるかもしれないだろ?」
「ありがとう。」
やっぱりこの人は凄い。
僕が思ってる事をすぐに当てて、更にそれを
実際に成し遂げられるように助けてくれる。
「敵わないなぁ…」
そんな僕の言葉は司には届かなかったが
その大きい背中を僕はいつものように追いかけ
車へと戻った。
司が運転する車に乗りながら
僕は窓から海が見えなくなるまで眺めた。
また、来るね…
その時は、思い出が戻ってきますように。
と願いを込めて…
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