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18歳以上ですか?
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司たちが九条さんと荒井さんって人を助けに行ってから1時間ほど経った今、特にすることもなくボーっとしていた。
そんな時ドアからノックが聞こえ
今、僕の知っている人はいないはずだったから
警戒しながら、少しだけ扉を開けて覗いてみた。
するとそこには着物を着ている女の人が立っていた。
「あら、貴方が司が拾ったっていう子かしら?」
「はい…。えっと、何方でしょうか?」
「あ!ごめんなさいね!私は黒崎桃子。司の母親よ」
「司のお母さん?」
「ええ、そうよ。良かったら私と少しお話ししてくれないかしら?大丈夫、司を待っている間だけよ」
「えっと…はい…お願いします」
すると僕の隣に座って、お互い自己紹介をした。
「あら!今18歳なの?羨ましいわ〜」
「桃子さんはおいくつなんですか?」
「あら、それ聞いちゃう?」
「あ!すいません!女性の方に失礼ですよね」
「ふふっ冗談よ、そうね〜永遠の20歳とでも言ってみましょうかね!」
「永遠の20歳いいじゃないですね!桃子さんお綺麗ですし、そう言われても納得しますよ」
「佑月くんはいい子ね!好きになっちゃうじゃない!」
司のお母さんはとても人が良さそうな人で
優しくて面白い感じが少し僕のお母さんに似ていた。
何故かお互い息ぴったりで話もかなり弾む。
そのせいかそんなたわいも話をした後、
今までの自分の事、両親が亡くなった事など
過去の自分自身について知らない間にペラペラと話していてそんな自分にとても驚いた。
だけどその話を桃子さんは親身になって聞いてくれた。
「そう…貴方はとても優しい子なのね」
「優しい?…僕が優しいだなんてないです。」
「いいえ、優しいわ。だってその5年間誰にも言わずに一人耐えてきたんでしょう?それは、心のどこかでその3人の事をまだ信じていたんじゃないかしら?」
「信じて…いた?僕は…5年間で嫌いになりました。そんなことはあり得ないと…思います。」
「そうね、嫌いにもなるでしょう。でも5年間嫌いな人たちの為に黙り続けていたのはなんでかしらね?」
5年間…黙り続けていた理由…
そう言われてみればどうして僕は誰にも言わずに
黙ってやられ続けていたんだろう。
嫌いならさっさと証拠を集めて警察にでも突き出せば
僕の前からアイツらは消えたのに。
普通なら怖くてできなかった。とか
周りに頼れる人がいなかった。とか…そんな理由なんだろうけど…僕はそんな理由ではない気がする。
決して頼れる人いないというわけではなかった。
僕には学校があったし、友達もいたから…
でも確かに3人への恐怖はあったんだ。だけどそれよりも怖いものが僕にはあった。
「3人に優しくしてもらった思い出はまぎれもない事実で、その思い出を無かったことにするだなんて僕にはできなかった…。嫌いなはずだったのに…信じたかった。その思い出が嘘だったと言われるのが怖かった…」
「…でも結局ダメだったんです。僕が物置に閉じ込められている間家では3人が笑っていました。
それを見ちゃったら…なんかもう…人が信じられなくなっちゃって…。」
「そうね、きっと私でもそうなってしまうわ。でも決して楽しかった思い出が嘘だったなんてことはないと思うの。じゃなきゃ佑月くんがこんなになってまで、必死にその思い出を信じようとするわけがないもの。」
「本当に…あの時は楽しく僕に接してくれて…たかな?」
「ええ、きっとそうよ。」
「そっか…」
少しだけ…少しだけだけど、気持ちが楽になった気がする。僕にもまだお母さんがいたら、こんな感じだったのかな?もっと沢山お話ししてくれていたかな?
すると桃子さんは僕を抱き寄せてこう呟いた。
「今まで頑張ってきたわね。」
その言葉に今までの自分がやっと認められたような気がして溜めていた想いが溢れて、僕は泣き叫んだ。
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