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中学生になると、状況は少し変わった。
部活に入ったからだ。
カナヅチの兄さんから切り離されたプールは僕の居場所になった。
歓声も視線も水中からだと遠く聞こえる。
25メートルを何度も折り返しながら僕はどこへでも行けるような気持になった。
1年生の誕生日の時、僕はクラスの女の子に告白されて付き合い始めた。兄さんも入れて3人でだったけれど、学校から帰るのはすごく楽しかった。
「あのね、ごめん、私…」
でも、それからひと月もかからなかったと思う。
「ああ、うん大丈夫だよ」
露骨にほっとした顔をして、彼女は兄さんの手を取った。
みんな、兄さんを「庇護欲をそそられる」と表現した。他の友達と一緒に帰っていても、友達が気にするのは兄さんの方。最初は真ん中に入って歩いていた僕は、だんだんと一方後ろからその様子を眺めるだけになっていた。
兄さんは素直だ。
僕にやさしい。
兄さんのことは嫌いじゃない。
やさしくて、素直で、明るい兄さんがみんなに好かれるのは当然だとささやく僕がいる。
「アキは大丈夫だもんね」
「アキは元気だから大丈夫だろ」
だんだんと、クラスのみんなからも言われるようになったその言葉。
なんて答えたらいいのかわからないから、僕はにこにこ笑って「うん、大丈夫」と答えることしかできなかった。
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