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訪問者4
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「すこし、話し過ぎちゃったね」
校長が頭を撫でてくる。先ほどよりも冷たく感じるのは、僕の熱が上がっているからだろうか。
「大丈夫。すこし肩の力を抜いてごらん。君は嫌いなものも隠してしまうタイプだと思うから」
なんだか随分と疲れた。まぶたが自然と下がる。
「…きらい」
たしかに、嫌いなものを伝えても意味はないと思う。相手にとって好きなものだったら、その分埋まらない溝があることを知ってしまうから。
「うん、君は何が好きで何が嫌い?」
もう殆ど考える頭は働かない。さっきの幻覚の世界へと飲み込まれる感覚にふっと身を委ねる。自分が何を喋ろうとしているのかもよくわからない。
「にいさん…好き……」
「うん」
「健斗も……」
「健斗くんも好きなんだね」
自然と零れた涙は生理的なものだと思う。
「泳いで…空見るの…」
「君は泳ぐのが上手だよね」
「…甘いのは嫌い……」
「へえ、そうなんだね」
「ケーキは寂しいから嫌い……」
「そうだね、みんなで食べたいよね」
「僕のなまえも嫌い」
だって、僕の名前に意味なんてないもん。
最後は届いたかわからないけれど、そこまで言ったところで完全にまぶたは落ちた。
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