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養護教諭2
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「へ…?」
思いもかけない言葉に驚いて先生を見る。
先生はじっと外を見てた。
「先生は…同性愛とか嫌いなんですか」
戸惑ってそうたずねると、先生はかすかに微笑んだ。
「いいえ、恋なんてね、犬としようが同性だろうが異性愛だろうが同じです」
その言葉に、深い想いを感じた。
もしかしたら、先生はそういうだけの恋をしたことがあるのかもしれない。
「僕はもう失恋してますから…」
「恋に落ちたら一巻の終わりですよ。その前に戻ることなどできやしませんからね」
「……戻れないんですか」
「離婚しても友だち同士!元どおり!なんて有り得ないでしょう、余程記憶力が悪いならともかくね」
そんなものか。
今時小学生でも好きだの付き合ってるだのあるのに、僕らはそんなに重いことをしてきているのだろうか。
「…君は失恋して正解だと思うけどね」
チラッと見られる。
ひどい言葉だと思うのに、なんとなく聞いてしまう。
「どうして、ですか」
「恋なんてエネルギー使うこと、今の君には向いてませんから」
「なんで分かるんですか?」
「……養護教諭は時折他の学部…つまりは小等部とか、中等部とか、そこを行き来したり今回のように不在中は代わりを頼みます。君が要保護として早川先生のところにいることももちろん共有済みですよ」
要保護。
保護されなければならないくらいエネルギーが足りてないと思われてるのか。
恋なんてしなければ、こんな事にもならなかったはずだよなぁ…たしかに、僕に恋は上手くできないのかもしれない。
「もし……僕がもう恋に落ちてるって言ったらどうします?」
ふと思いついて口にだす。
先生は奇妙なものでも見るような顔をした。
「噂の方に?」
健斗のことだろう。
首を横にふる。
「早川先生」
少しの静寂。
そして、先生は笑みを浮かべた。
「有り得ないでしょう」
「…だからifの話ですって」
「だから、有り得ないでしょう?君は居場所を自ら壊せるほどチャレンジャーではない」
「…居場所になってくれたから、むしろ……とか」
「ありえない。
でも、もしも…万が一そんなことがあったとしたら…」
言い淀んだ先生をじっと見る。
「万が一があったとしたら?」
「その時はご愁傷様と言って差し上げましょうか。
恋という名の地獄へようこそ、と」
地獄。
恋は地獄なんだなあ。
身を焦がすほどの想いに動かされるのだから、確かに地獄なのかもしれない。
先生の言葉を頭の中で繰り返す。
有り得ない、ifの世界の恋心。頭の中でその世界を広げてみようとすれば先生に抱きしめられた時のことを思い出した。
大丈夫。
先生にとって僕は弟でしかないんだから。
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