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ひとごと
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学校中が重い空気に包まれた。
兄さんのことは公表されてない。警察も大々的には動いてない。それは被害者のことを配慮してるからだけど、既に暗黙のうちに噂は広まっていた。
健斗が、教室で大きな声で言ってしまったことも原因なんだろう。
奇異の視線は僕らを突き刺した。
「では次、香坂……」
「は、はい」
それから、いきなり二者面談が始まった。
実技科目やLHRの時間に一人ずつ呼び出されて先生たちと面談するもの。
これも明言はされなかったものの、今回のことに関係しているんだろう。
早川先生が言っていたことはこのことだったんだと今更ながらに理解した。
「アキ、大丈夫?」
こっそりと声をかけてきた有紀に頷く。
もうすぐ僕の番だった。
「大丈夫…そんなに時間かからないみたいだし」
「…嫌なこととか言われたら殴りに行くから言ってね!」
「暴力よくないよ」
ニコってされて僕も苦笑いになる。
有紀は、何もきかない。
それがどれだけ有難くて難しいことなのか、わかっているだけに申し訳ない気持ちが込み上げてくる。
たくさんの人に迷惑をかけすぎている自分が、情けない。
「…次は……篠原か」
少し迷いのこもった声に顔を上げる。
腫れ物を扱うような態度はもう慣れた。
「はい」
返事をして席を立つとクラス中がこちらを見たのがわかる。それを気にしないふりをしながら扉は向かう。
まっすぐに視線を返せる意気地など今の僕にはなかった。
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