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豪邸(3/5誤字修正)
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馬車に揺られながら、窓から見た街の光景は、まるで中世のヨーロッパのようだった。行き交う乗り物は、馬車のみ。馬車の走る道は何も舗装されていないが、化け物たちが歩くであろう道は、綺麗な石で舗装されていた。
周りには、教科書に載ってそうな煉瓦や石造りの建物が立ち並んでいる。携帯のような電子機器を使っている化け物は、見る限り、一匹もいない。道に並ぶのがガス灯だけだったので、きっと電気もないのだろう。
そういえば、化学は、魔法と反対にあるものだと誰かに聞いたことがある気がする。ファンタジーの生き物としか言いようのないこいつらにとって化学は、天敵のようなものなのかもしれない。
そう考えれば、この一世紀遅れた光景も頷ける。
「着いたぞ」
どうやら、こいつの住処についたらしい、再び担がれて馬車を出ると。
「……わぉ」
目の前に豪邸が建っていた。庭だけで東京ドーム2桁分ありそうなくらいだ。噴水や森がある庭なんて、アニメやドラマの世界の話だと思ってたから、それを目のあたりにすると、感動の一言しか浮かんでこない。それに見劣りしない屋敷は、下手したら、数百位の部屋があっても驚かない程の大きさだった。
ジークがこの化け物はいいとこの社長とか言ってたが、いいとこ過ぎるだろ。財閥かなんかの御曹司かよこいつ。あれか、少女漫画でよくあるテンプレートを兼ね揃えた金持ちか。
「……」
「なんだ、俺の顔になにかついてるか?」
「別に」
思いつく限りの少女漫画に登場する御曹司の項目を上げてこいつを観察したら、ほぼ9割にチェックが入ったってだけだ。
世の中、理不尽だらけだ、本当に。
そもそも、顔よしのお金持ちって時点で女子にとってみれば、かなりポイント高いだろう。ま、化け物って時点で、その点数はマイナスまで急降下するだろうがな。
「セルフィ。紋章を屋敷の周りに書いてきてくれ。荷物はほかの奴に頼め」
「かしこまりました。旦那様は」
「俺は、こいつを部屋まで連れて行く。初めての人間だ。じっくり観察したい」
おい待て。観察とはなんだ。
「それでしたら、一度湯浴みをさせた方がよろしいかと」
そっちも普通に受け入れるな。
「そうだな」
心の中で突っ込んだが、伝わるはずもなく。俺はそのまま風呂場に連れていかれた。途中、何人もの召使らしき化け物とすれ違ったが、どれも男だった。可愛いメイドとかを少し期待していた俺にとっては、がっかり以外の何者でもない。
そこでふと、昔ゲームに出てきたスライムを思い出した。
スライムには、性別がなかった。触手=スライムにしていいのかわからないが、もしかしたら、こいつらには、女っていう概念自体が存在しないのかもしれない。
(そういえば、召喚された奴らも全員男だったな)
よく分からないが、なにか理由があるのだろう。
落胆の気持ちは消えないがな!
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