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「なら、この服に着替えろ」
「……」
寄越された服を着ると、昨日と同じ部屋に通された。あの、食事をする部屋だ。
「朝食をシェフに作らせた」
昨日の人間の丸焼きを思い出して、憂鬱になる。またあんなのが並んでたら、食欲減退する自信しかない。そしたらまたカーペットの上に寝そべってやろう。そう思いながら、扉を開けた俺は、ぽかんとした顔で机の上を見てしまった。
「これ……」
机の上に置かれていたのは、湯気のたった粥らしきものと、数種類の果物。昨日の状態からみると、滅茶苦茶質素に見える。けど、俺としては嬉しい献立だ。
「昨日はなにも食べていないからな。人間の臓器に優しいものを調べてシェフに作らせた」
「……」
「それと、人間は、滅多な事がないと同種食いをしない、寧ろ嫌悪感を抱くのだな。昨日の食欲不振は、それが原因なんだろ。俺の配慮が足りなかった。すまない」
いきなり化け物に頭を下げられて、俺は視線をさ迷わせてしまった。
こいつらにとって、俺らは替えのきく道具のようなものだ。気に入らなければ、食べてしまえばいいし、こいつも風呂場では本気で食べると言っていた。あの視線は確実に、俺をそこら辺の物としてしか見てなかった。
なのに、今はまるで対等な相手のように扱われている。どういう心境の変化なのか分からないが、不信感しかない。
けど、謝ってくれたやつを無碍にするほど、俺は冷たい人間ではない。
「もうしないなら、いい」
どうすれば、伝わるか分からず、取り敢えず化け物の頭を撫でる。
「許してくれるのか?」
頷く。
「そうか、良かった」
「……」
化け物とはいえ、美形の笑顔は、同性にも効果抜群みたいだ。顔が紅くなるのを感じ、視線を化け物から逸らす。そんな俺の姿を、化け物は不思議そうに眺めていた。
「どうした? 顔が赤いが」
「なんでもねぇ!」
叫びながら椅子に座る。瞬間、ふわりと鼻腔を擽る粥の香りに、よだれが出そうになり、慌てて口を拭った。落ち着け俺の胃袋。
「さてと」
手を合わせると、化け物に怪訝そうな顔をされた。
「なんだ、それは」
「食事前の挨拶だよ」
言っても伝わないと分かっていながらも答える。化け物は、暫くの間考えた後、ぽんと手を叩く。お、もしかして伝わったのか?
「そうか、食事前の神への祈りか」
いや、それは宗教違いだ。思わず半目で化け物を見たが、本人は納得してしまったのか、俺の視線に気づいてない。
「髪色によって祈り方は様々だと聞いていたが、黒髪の人間は、手を合わせるのか」
日本人はそうだが、韓国とか中国は知らないぞ。あと、なんかキラキラした目で見るな。食べにくい。
「……いただきます」
冷めたらシェフに悪いと思い、化け物の視線を無視して、スプーンらしきもので粥を掬い口をつける。
「……うまい」
若干塩味が強いが、優しい味だ。昨日からなにも入れてなかった胃袋に染み渡る。最初は恐る恐るだった手が、どんどん早くなっていく。最後には掻き込むように皿を持って食べていた。
「あんまり急いで食べると喉に詰まるぞ」
「ん」
返事はしたが、手は止まらない。どうやら、思った以上に腹が空いてたらしい。
「ごちそうさま」
「よく食べたな」
何故か触手で頭を撫でられる。俺は子供じゃないんだが。
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