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⑥
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「ジーク。黒髪が売れた。私はお客様と契約するから、商品を連れてきてくれ」
「はーい」
黒髪ちゃんが売れた。それは、飼育員として嬉しいことだけど、俺本人としては、少し寂しいお知らせ。
買ったのが兄さんの親友ーーおにーさんだから、そこまで遠くない場所にいかないのは、分かってるけど。
「やっぱり寂しいね」
そんなこと呟いてたら、黒髪ちゃんは一瞬嫌そうな顔をしてきたけど。そっぽを向いたあと、何かを呟いた。
「 」
その音に聞き覚えがあった。思わず目を見開く。
それは、黒髪ちゃんが体調を崩した時に聞いた。
感謝の音。
「もう、お礼言ったの? 可愛いなぁ」
「 !」
黒髪ちゃんは、きゃんきゃん怒っているけど、俺には可愛くしか映らない。
ふと、もしも、黒髪ちゃんがこのまま売れないで、残っていたならと考えた。
そんなもしもがあったならーー。
「(俺がこの子を買ってたんだろうな)」
黒髪ちゃんとの生活。それもまた、楽しかっただろう。けど、この子はもうおにーさんのものだ。その未来が訪れることはない。だから、せめて。
「君が幸せな最期を迎えられることを祈ってるよ」
祈る事と、そのサポートだけはさせてね。
おにーさんと黒髪ちゃんが乗った馬車を見送った後、俺はそうだと手を叩く。
「兄さんにこの事、伝えとこ」
兄さんの事だ。きっと見に行きたいと絶対に言う。それに便乗する形で黒髪ちゃんに会いに行こう!
「待っててね。黒髪ちゃん 」
まだ見ぬ、けど、確実に訪れる再開に、俺は胸を踊らせながら店の扉を閉めた。
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